Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
win-winはカタカナ読みで「ウィンウィン」。win(勝つ)という動詞が2つ並び「勝ち、勝ち」で、双方とも「勝ち組」であることを示す形容詞になる。「状態」を意味する名詞situationを付けて、win-win situationと言えば、まさに「双方に有利な状態」である。
たとえば、米国人の友達から英会話を習うかわりに、その友達に日本語を教えることで、それぞれ別々に語学学校に通う費用をチャラにできる-という提案はwin-win proposition。
さて、2008年の米大統領選挙では、共和党の大統領候補はジョン・マケイン上院議員で一本化されたが、民主党の予備選では、ヒラリー・クリントン上院議員とバラック・オバマ上院議員の熾烈な指名争いが続いた。民主党では当初、これほど混戦になると予想した人は少なく、適当なところで決着がつくか、“The joint Clinton-Obama ticket is a win-win-win solution.”(クリントンとオバマが正副大統領候補としてコンビを組むことが、3者に有利な解決策)との妥協が生まれる、と見込んでいたという。3者とは、クリントン、オバマ両氏、そして民主党。だが、両氏のどちらが主導権を取るかが問題となった。そこで、クリントン元大統領が3月初め、オバマ氏に副大統領候補となるよう打診。だが、勢いに乗るオバマ氏は“I’m not running for vice president. I’m running for president of the United States of America.”(私は副大統領ではなく、合衆国の大統領を目指す)と断固拒否、戦いの続行を宣言した。
win-winと違って勝敗が決まるのがzero-sum(ゼロサム)。一方の得点は他方の失点となり、その総和がゼロという状態。民主党の予備選について言えば、代議員の総投票数は決まっているから、クリントン氏かオバマ氏か、一方が勝てば他方は敗れる。この現状は、zero-sum game(ゼロサムゲーム)だ。この言葉は、20世紀半ばに数学の「ゲームの理論」として登場。その後、拡大しないマーケットでの競争を意味する経済用語としても流行した。だが、実際の経済は成長し拡大するから、zero-sumよりもnon-zero-sum(非ゼロサム)の状況の方が圧倒的に多い。とくに、ビジネスは売り手も買い手も双方に有利となる交渉、win-win negotiationが基本だ。
では、“How do you do win-win?”(どうやって双方有利にするか?)〝交渉の専門家〟ジム・トーマス氏は著書“Negotiate to Win”(交渉して勝つ)で、そのコツを“To get what you want, you’re going to have to trade for it.”(欲しい物を得ようとするならば、交換できるものを提供すべし)という。もっとも“Another way to get what you want is to take someone outside and give them a real good kicking.”(もう1つの方法は、相手を外に引きずり出して、一発蹴りを入れること)だが、これは〝場外乱闘〟になる。The Sankei shimbun(April 20 2008) 「グローバル・English」はこちらへ