Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
stakeは複数形にするとギャンブルの「かけ金」、ポーカーのチップなどを指す。raiseは「上げる」。そこで、raise the stakesは、チップを積み上げて「かけ金をつり上げる」という慣用表現。リスクや犠牲などを増大させるという比喩にも使う。カタカナ読みは「レイズ・ザ・ステイクス」。
ウォールストリート・ジャーナル(2010年4月12日付)は“Medical Schools Can’t Keep Up”(医学校がついていけない)という記事で、“The new federal health-care law has raised the stakes for hospitals and schools already scrambling to train more doctors.”(医療に関する新たな連邦法は、すでにより多くの医師の養成に奮闘している病院や学校に対して、さらなる難題を突きつけることになった)と報じた。
この連邦法は、先ごろ成立した医療保険制度改革法。今後この法律の下で新たに数百万人が医療保険に加入すると、医師不足に見舞われるという。米国医科大学協会(AAMC)によると、アメリカには現在約95万4000人の医師がいるが、“The nation could face a shortage of as many as 150,000 doctors in the next 15 years.”(この先15年間で15万人に及ぶ医師不足に直面しそうだ)と予測。とくに、“The greatest demand will be for primary-care physicians.”(もっとも大きな需要は、プライマリ・ケアにたずさわる医師であろう)。それだけに、医学校はさらに多くの医学生を養成するため、学校での教育や病院での研修制度を大幅に拡張する必要性に迫られている、という。だが、無理な拡張によって、未熟な医師を〝濫造〟するという危険性も大きくなるわけだ。
さて、昨今はアメリカでも、一発小説でも当てて世に出ようという人が多い。そこで、“Plotting a novel”(小説の筋をつくる)の場合、読者を引きつけるコツが、ずばり“Raising the stakes”。いったい、どういうことだろうか?
ある小説の書き方のサイトに、こうあった。“When you have your heroine up a tree with lions prowling and roaring below, start throwing stones at her.”(作者は、ライオンが下でうろつきながら吠えている木の上に主人公の女性を想定する場合、まず彼女目掛けて石を投げることから始めよ)。言い換えれば、小説の筋は事態が悪くなることから始め、好転する前にさらに一段と悪化させることによって読者をハラハラドキドキさせ、ページに釘付けにすることができる、と指南している。
思うに、raise the stakesという慣用表現が生まれたのはギャンブルの世界であるだけに、“High risk, high reward.”(日本語では「ハイリスク、ハイリターン」=リスクが大きいほど見返りも大きい)という考え方が支配的。その行為をめぐって、未来への期待と不安が交錯するところがミソと言えそうだ。The Sankei Shimbun (May 10 2010)
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