Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
loopはヒモなどで作る「輪」。輪がいっぱいになったfull of loopsがloopy。すなわち、輪がこんがらがってもつれている状態が想像できる。アメリカン・ヘリテージ辞典は、offbeat(風変わりな)、crazy(狂った)と定義する。さらに、俗語としてsilly(バカな)とかstupid(愚かな)という意味で使われる。カタカナ読みは「ルーピィ」。
先日、ワシントンで開催された核安全保障サミットをめぐり、ワシントン・ポスト(2010年4月14日付)が、出席した鳩山首相をloopyと呼んで酷評したことが話題となった。原文では、“By far the biggest loser of the extravaganza was the hapless and (in the opinion of some Obama administration officials) increasingly loopy Japanese Prime Minister Yukio Hatoyama.”
文中のextravaganzaは、イタリア語起源で音楽やオペラの豪華ショーを意味したが、ここでは「政治ショー」としてのサミット。「サミットでの最大の敗者は断然、不運で(オバマ政権の何人かの役人の意見では)ますますloopyな日本の鳩山由紀夫首相だった」という意味になろう。
この酷評の背景には、迷走する米軍普天間飛行場の移設問題に対する米政府のいら立ちがある。記事は、鳩山首相は5月までに別の提案をすると言ったが、これまで何も出てこない、とした上で、“Uh, Yukio, you’re supposed to be an ally, remember?”(ああ、ユキオ、同盟国であることを覚えておいでか)と問いかけている。ここでloopyをどう解釈するか?
鳩山首相自身は21日の党首討論で、「私は愚かな首相かもしれません」と認めたが、すぐに言葉を変えて「愚直だったから」とも述べた。
さて、過去のアメリカにも同じようなケースがある。2002年11月のNATO会議の際に、カナダの報道官が記者団との懇談でブッシュ前大統領を“moron”(カタカナ読みは「モロン」)と呼んだことが報道され、その後“Moron Bush”がメディアにあふれた。moronは、1910 年にアメリカの心理学者がギリシャ語のmoros(英語ではdull=頭が鈍い)から創った専門用語で、7歳から12歳ぐらいの精神年齢と思われる人物を類別するものだったが、後に学術用語としては使われなくなり、stupidとかfoolish(バカな)などの意味の〝悪口〟として残った。
当時はイラク戦争の開戦前で、ブッシュ氏が先頭に立って各国に圧力をかけ、参戦を呼び掛けていた。反米感情が急速に高まり、外交コミュニティでは同氏を「ネオコンの操り人形」と罵る声が噴出。そのムードが報道官の〝失言〟につながったようだ。結局、報道官はその責任をとって辞任した。
思うに、一国の代表者が外国のメディアに公然と揶揄されるというのは、実に情けない話だが、揶揄される側にも、それなりの理由があるのだ。The Sankei Shimbun (April 26 2010)
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