Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
antebellumの語源はラテン語で、anteは英語のbefore(前に)で、bellumはthe war(戦争)。つまり、before the war(戦前)。ただし、ここでいう戦争はCivil War(南北戦争=1861~1865)である。この戦争を経て、南部と北部に分かれていた米国が統一された。antebellumは、日本史では時期的に江戸時代後期に当たるが、同じようなnostalgia(郷愁)をともなって、よく話題に上る。カタカナ読みは「アンティベラム」。
antebellumnについて最近話題になったのが、初代アメリカ大統領のジョージ・ワシントン(1732~99)が、図書館で借りたまま返すのを忘れていた本のエピソード。ロイター通信(2010年5月20日付)は、“George Washington’s Library Book Returned 221 Years Late”(ジョージ・ワシントンが借り出した図書館本が221年ぶりに返却された)と報じた。ワシントンが1789年10月5日にニューヨークの図書館から借りたE・ヴァッテル著“The Law of Nations”(『国際法』)が、最近になってバージニア州のマウントバーノンに現存する邸宅から見つかった。これまでの延滞料を計算すると30万㌦に上るという。このニュースはニューヨークの地元紙が最初に報じたが、次第に注目を集め、ついに、本を返却された図書館では5月19日に記念のセレモニーを行ったという。
ところで、南北戦争の後の「戦後」は、「後」を意味するpostが付いて、postbellumという。戦争から約150年が経とうとしているが、AP通信(5月19日付)は、“Civil War Soldier from Wisconsin Awarded Medal of Honor for Battle of Gettysburg Heroics”(ウィスコンシン出身の南北戦争の兵士、ゲティスバーグの戦いでの勇敢な行為によって名誉勲章を授与される)と報じた。その人はアロンゾ・カッシング氏で、ウエストポイントの陸軍士官学校を卒業して北軍に参加。ゲティスバーグでは、南軍1万3000人の侵攻に対して、110人の兵士と6台の大砲を指揮して果敢に応戦し、1863年7月3日、22歳で戦死したとされる。
それにしても、なぜいま勲章授与なのか。アメリカにも日本の幕末ファンと同様、Civil War History buff (南北戦争歴史ファン)と呼ばれる熱烈な愛好者がおり、彼らが兵士の子孫や出身地の住民と一緒に公的な顕彰を求めて陳情を行う。名誉勲章は大統領から直接授与される最高位の勲章で、国防総省によると、南北戦争の兵士ではこれまで1500人以上に授与されており、直近の授与は2001年だったという。
さて、最近アメリカのcountry popで大人気なのが、Lady Antebellumの男女3人組。そのヒット曲“I Run to You”で、こう歌っている。“This world keeps spinning faster, Into a new disaster so I run to you”(この世はますます速く回り続けて新たな災難に突入する。だから僕は君の元へ駆けて行く)。今の世相をよく表しているではないか。The Sankei Shimbun (Jun 14 2010)
0 件のコメント:
コメントを投稿