2011年10月12日水曜日

apples and oranges


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 appleは「りんご」、orangeは「オレンジ」で、いずれも果物ではあるが、その違いは歴然としている。そこで、compare apples and orangesは、本来比較できないものを比較する、日本の「月とスッポン」に近い慣用表現である。apples and orangesはその略で、カタカナ読みは「アプルズ・アン・オレンジズ」。
 ポリティコ(2010年6月9日付)は、“Arena Digest”(政界ダイジェスト)のコラムで、“Is Obama like Carter?”(オバマはカーターに似ているか?)との疑問を投げかけた。カーターとは、ウォーターゲート事件のあと、政治刷新を訴えて当選した民主党のカーター大統領。中東和平を積極的に進めたが、急速な軍縮政策によって軍事プレゼンスが低下し、イラン革命(1979)を招いてしまった。その後、イランの米大使館人質事件で人質救出作戦に失敗、ついに再選を果たせなかった。つまり、“Carter is now the shorthand for the failed presidency.”(カーターは今や、失敗した大統領を表す略号だ)というわけ。
 “Yes, We can!”を旗印に変革を訴えたオバマ氏も、経済の立て直しが順調に進まず、支持率は今や50%を切るようになった。それに追い打ちをかけたのが、メキシコ湾の原油流出事故。被害は拡大し続けており、危機管理能力が厳しく問われている。この事故が〝命取り〟になるのではないか、との見方も出ており、11月の中間選挙で民主党は、苦しい局面に立たされそうだという。
 これに対して、“Whatever you think of the Obama administration’s performance, the comparison to President Carter is apples and oranges to my mind.”(オバマ政権の実績について何と考えようと、カーター大統領との比較は、見当違いの比較、と私には思える)というのが、オバマ支持者の意見。原油流出事故はオバマ氏に直接責任があるわけではなく、支持率はなお回復の余地がある。さらに、野党共和党には、カーター氏を破ったレーガン大統領のような有力なリーダーが、今のところ現れていない、という。
 ところで、apples and orangesの違いは、「月とスッポン」ほど明確であろうか?どちらも同じ果物と考えられるのではないか?
 実は、この慣用表現の用法については、アメリカでも議論がある。たとえば、“Comparing the average wages of workers and managers is like trying to compare apples and oranges.”(労働者と管理職の平均賃金を比較するのは、りんごとオレンジを比較するようなもの)というのが適切かどうか?
 そこで、プロの作家の模範的な使い方を。スティーブン・キング氏は、次のようにいう。
“Books and movies are like apples and oranges. They both are fruit, but taste completely different.”(本と映画はリンゴとオレンジのようなもの。両方とも果物だが、味はまったく違う)。The Sankei Shimbun (Jun 28 2010)

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