2013年1月24日木曜日

outsmart 知恵のある者が勝つのだ

Illustrated by Kazuhiro Kawakita

  smartは日本語でも「スマート」というが、ここでは「利口な」「賢い」という形容詞。その前のoutは「まさる」という意味の接頭辞。outsmartは、知恵でまさって「出しぬく」「裏をかく」という動詞になる。類義語にoutwit、outfoxなどがある。foxは「キツネ」で、狡猾さを示す。
 AP通信は、2012年12 月31日ニューヨークで起こったsmart phoneの紛失事件の奇妙な顛末を報じた。題して“iPhone owner outsmart thief”(iPhoneの所有者が泥棒を出し抜く)。
 NEW YORK (AP) — Nadav Nirenberg told the New York Post that he left his iPhone in a livery cab on New Year’s Eve.(音楽家のNadav Nirenberg氏がNew York Postに告白したところによると、彼は大晦日にタクシーにiPhoneを忘れた)
 The next morning, the 27-year-old learned via email that someone was sending creepy messages to women using a dating app on the phone.(翌朝、誰かがiPhoneのデートのアプリを使って女性にいやらしいメッセージを送っているのをメールで知った)
 So he logged on to the service and offered the man a date — as a woman. He even sent a picture of a pretty girl.(デートサービスにログオンして、女に扮して男にデートを申し込んだ。可愛い女の写真も送ってやった)
 When the culprit arrived at Nirenberg’s apartment, the musician jumped out brandishing a hammer. But he also offered $20.(犯人がNirenberg氏のアパートメントに到着するや、この音楽家はカナヅチを振り上げて飛び出していった。が、20ドル札を差し出しもした)
 The thief handed him the iPhone and bolted.(泥棒はiPhoneを手渡すと、飛んで逃げた)
 つまり、音楽家は手練手管でもって見事iPhoneを取り戻したというわけ。
 ところで、ニューヨーク・タイムズ(2011年12月28日付)は、“Will China outsmart the U.S.?”(中国は米国を出しぬくだろうか)との寄稿を載せた。
 この見出しからすぐに思い出したのは、クリントン米国務長官が打ち出したsmart powerと呼ばれる外交方針。外交、経済、軍事、政治、法律、文化にいたる諸手段を駆使して〝賢明な力〟の外交を展開するというもの。それで、総合的な外交でも中国にしてやられると懸念しているのか、と早とちりしそうになった。
 だが、記事の内容はさにあらず。環境エネルギー、バイオ、ナノテクノロジーなど先端技術分野の研究開発で、中国が10年後に米国を追い抜くのでは、と懸念されているというのだ。“Our global competitiveness is based on being the origin of the newest, best ideas. How will we fare if those ideas originate somewhere else?”(われわれのグローバルな競争力は、最新、最良のアイデアを生み出す源であることに基づいている。これらのアイデアが他所で生まれたならば、われわれはどうしてやって行くのか)と。まさに世界の国々はoutsmartするために、躍起になっているのだ。
 さて、カナダテレビ放送(2011年1月5日)は、“Can other smart phones outsmart the iPhone?”(他のスマートフォンはアイフォーンを超えられるか)と報じた。ケータイの市場でも、より高度な機能を備えたスマートフォンの開発競争は激しい。アップルのアイフォーンに追いつけ追い越せと、各メーカーはoutsmartのためにしのぎを削っているという内容。2013年を迎えた今もsmart phoneの戦いは決着が付きそうにない。