Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
freeは「自由な」「無料の」という形容詞で、「束縛されていない」状態を指す。ハイフンで名詞の後ろにつなげると「~なしの」という意味になる。たとえばlead-free petrolは「無鉛ガソリン」で、duty-freeは「免税」。そこで、passport-freeは「パスポートなし」で、実際にはパスポートの検査や押印など出入国管理事務の省略を意味する。
国際化の進展でvisa-free travel(ビザなし=査証免除旅行)はかなり普及。ロシアのモスコウ・ニュース(2011年6月1日付)は、“Visa free Russia by 2014?”(2014 年までにロシアは査証免除に?)と題する記事で、ロシアと欧州連合(EU)が歩み寄り、2014年のソチ冬季五輪には、欧州からビザなしで行けるようになるだろうと述べた。
さて、トルコのトゥデイズ・ザマン(2011年5月31日付)は、“Travel between Turkey and Georgia now passport-free”(トルコとグルジア間の旅行は今やパスポートなし)と報じた。グルジアは旧ソ連邦の1つで、トルコ東北部で国境を接する。両国間では90日以内の旅行は査証免除だが、“Turkey and Georgia took their visa-free travel policy a step further, initiating a passport-free travel regime under which their nationals will be able to visit each other's country with national identity cards alone.”(トルコとグルジアはビザなし旅行方針を一歩進め、パスポートなし制度を開始、そこで両国民は、国籍証明カードの携帯だけで双方の国を訪れることができる)という。
一方、EUでは欧州の経済統合にともない、1985年に各国民の自由な移動を許可するシェンゲン協定を締結、国境での検査を廃止している。だが、英国のインディペンダント(5月14日付)は、“Flood of North African refugees to Italy ends EU passport-free travel”(イタリアへの北アフリカからの難民の大量流入がEUのパスポートなし旅行を終わらせる)と報道。チュニジアやリビアでの反政府運動の混乱で生じた難民が、欧州各国へ逃げて不法移民化するのを危惧しての対策だ。
今はborderless(国境なし)の時代というけれども、国境自体はなくならない。
(June 20, 2011)
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