disarrayは、否定の接頭辞dis-とarray(整列)を組み合わせた語。動詞は、to throw into disorder(混乱させる)という意味。名詞は「混乱」「無秩序」。カタカナ読みは「ディサレイ」。“in disarray”(混乱状態に)の形で用いられることが多い。
The Fiscal Times(2013年2月11日付)は、"Pope Leaves Financial Disarray in His Wake” (法王の引退の後には財政の混乱が残る)と報じた。ローマ法王ベネディクト16世の引退発表は世界に驚きをもって受け止められた。
しかしながら、知る人ぞ知る。バチカンの〝金庫〟は混乱の極みという。全世界12億人の信者から多額の寄付を集め、40億㌦の資産を持つとされるが、マネーロンダリングの疑いがつきまとい、イタリア当局は一昨年3000万㌦を差し押さえた。また、昨年5月にはVatileaksと呼ばれるスキャンダルが起こり、法王の執事が逮捕されるにいたって、ずさんな金銭管理と腐敗が明るみに出た。
カトリック教会は、欧米各国で性的虐待が明るみに出て、賠償金の支払い請求で財政難に追い込まれており、スキャンダルに嫌気して信徒の数も激減しているという。法王が、体力と気力の衰えで、これ以上執務を果たせないというのは、なるほどと思える。
ところで、ウォールストリート・ジャーナル(2011年7月7日付)は、“Japan nuclear ‘stress test’ plan leaves policy in disarray”(日本の原子力発電所への〝ストレステスト〟の導入計画が政策の混乱をもたらす)と報じた。
ストレステスト(耐性検査)は、“stricter safety standards needed for nuclear power plants”(原子力発電所にとって必要なより厳しい安全基準)となるもので、政府が運転停止中の原発の再稼働を進める中、民主党の菅元首相が言い出した。“The proposal baffled local governments hosting nuclear plants as to where the central government is headed with its energy policy.”(その提案は、中央政府のエネルギー政策がどこへ向かって行くのか、原発を抱える地元自治体を困惑させることになった)と述べている。このbaffleの語には、to defeat someone's efforts(人の努力をくじく)という意味のほか、語源をさかのぼるとto disgrace(顔に泥を塗る)という含意がある。いったん原発の再稼働を容認した自治体の首長らが受けた仕打ちを表現している。
再稼働問題は今また、原子力規制委員会の取り挙げた原発立地の活断層の認定をめぐって、一段と混乱に拍車が掛かっている。
しかも、肝心の福島第一原発の事故処理も遅々として進まず、廃炉への道筋も見えない。国民は、原発問題に関して、何一つ正しいことを知らされないまま時間だけが過ぎていく。まさに、in disarrayである。(July 25, 2011)
0 件のコメント:
コメントを投稿