Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
whatchamacallitは、発音をカタカナ書きすると「ワチャマカーリット」。英語に聞こえず、「何のこっちゃ」と思うのは当然。書き言葉としてお目にかかることはまずない。だが、米国での日常会話では頻繁に耳にする。実は“what you may call it”(それの呼び方)を圧縮して、素早く言った言葉。日本語でよくいう、「あれ何だっけ、あれ、あれ」に当たる。自分の言わんとするものの名称を忘れて思い出せないときとか、名称を知らないときに使う表現である。
whatchamacallitのバリエーションは多い。人の名前が思い出せないとき、「あいつ誰だっけ」に当たるのがwhat’s-his-face。相手が女性の場合はwhat’s-her-face。容貌は憶えているから、“One of your friends asked me to give you this package. It was…, what’s-his-face,…the big guy with broad shoulders…”(君の友達がこの包みを渡してくれって。あれ誰だっけ、肩幅の広い大きい男…)などと使う。
物忘ればかりではない。名称が難しくて憶えられない場合もある。最近、駅や公共施設でよく見かけるのが、救命用のAutomated External Defibrillator(自動体外式除細動器)。AEDと略称が表示されているが、緊急事態に遭遇し、英語でも日本語でも機器の正確な名称を言える人が何人いるだろうか?多くの人は“Bring here AED thingamajig!”(AEDとかいう、あれ持って来い)と叫ぶのがせいぜいだろう。このthingamajigもwhatchamacallitと同じで、日本語に訳すと「あれ」。アメリカン・ヘリテージ辞書などによると、語源はthing(もの)から変化したthingumで、19世紀に遡り、thingamabobともいう。
thingamajigのほかに、もっと小さいものや、ふざけて言う場合にはthingy。オンラインのUrban Dictionaryに出ていた用例を紹介すると、
観光ガイド:“See the waterfall.”(滝を見てください)
子供:“Um…the what?”(えっ、何?)
観光ガイド:“That water thingy over there.”(むこうの、あの水のあれです)
また、「あれ」が〝名称不明〟の道具や機械になると、doohickeyとかdoodadを使うことが多い。“Can you hand me that doohickey on the table?”(テーブルの上のあの何とかいう道具を取ってくれないか)などという。
whatchamacallitなどは、英語の初学者には大変便利な言葉で、つい誘惑に駆られて使いたくなるが、どの辞書にも詳しい説明はない。むしろ、こういう言葉は知っていても使わない方がよいそうだ。「多用するようになると、要注意」との警告が出ており、「何のこっちゃ」と思ったら、Age Associated Memory Impairment(加齢による記憶の減退)、つまり、〝老人ボケ〟の始まりでした。The Sankei Shimbun(November 25 2007) 「グローバル・English」はこちらへ
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