dropoutは、日本でも「ドロップアウト」(離脱)という。「落ちこぼれ」「落伍者」を意味する名詞。drop(落ちる、落とす)という動詞とout(外へ)という副詞に分けて考えると、その意味合いは明瞭になる。一方、factoryは「工場」。dropoutを作り出すfactoryとは〝欠陥工場〟みたいだが、米国では近年、公立のhigh school(高校)で落第・退学問題が深刻になっており、中途退学する生徒の多い学校がdropout factory(落ちこぼれ生産工場)と呼ばれて、批判の対象になっている。カタカナ読みは「ドロップアウト・ファクトリー」。
dropout factoryは、ジョンズ・ホプキンス大学の教育問題研究者であるロバート・バルファンツ博士の造語。「最終学年まで進級する生徒が60%を上回らない高校」と定義。つまり、40%以上の生徒が中途退学する。バルファンツ博士らがこのほど、全米で約1700の高校のデータを分析した結果、12%がdropout factoryであることが分かった。AP通信(2007年10月29日付)は“1in 10 Schools Is ‘Dropout Factory’”(10校に1校が落ちこぼれ生産工場)と報じ、この傾向は10年前とほぼ同じ水準、と指摘した。
マイクロソフト創業者夫妻のビル&メリンダ・ゲイツ財団が2006年3月にまとめた「高校の落ちこぼれ状況」に関するレポートでは、dropoutを“The Silent Epidemic”(沈黙の流行病)と命名し、その原因を追究。全米の25の地域で高校を中退した16~25歳の男女467人に対面調査をしたが、半数近くが、落ちこぼれた最大の理由は「授業が面白くなかったから」と答えている。また、10人中7人が、「勉強しようという気が起らなかった」と述べており、教師の指導法に大きな問題があることを示唆した。もっとも、退学にまで追い込まれるには、それ相当の理由があり、「働いて金を稼ぐため」(32%)、「(子供ができて)親になったため」(26%)、「家族の面倒をみるため」(22%)など、経済的・家庭的要因が大きい。
いずれの調査でも、dropoutが集中しているのは大都市と南部・南西部の諸州。人種的には黒人、ヒスパニックなどの割合が白人やアジア系を大きく上回っており、貧富の格差が大きな影響を与えていることは否定できない。
さて、当事者である高校生や、さらに大学生の間では、dropoutの代わりにflunkoutと言うことが多い。flunkは、「落第する」「落第させる」どちらにも使える動詞。ランダムハウスの「米俗語歴史辞書」によると、19世紀半ばにまで用例が遡り、米国に大学が創設されるとともに、「落第」も始まったようだ。flunkoutを「落ちこぼれ」の意味で使うのは比較的新しく、1950年代からという。思うに、dropoutの語がメディアにどんどん登場し、教育機関の公式の文書にまで記載されるようになったため、仲間内で使うには心地の悪い言葉になってしまったのだろう。The Sankeio shimbun(December 2 2007) 「グローバル・English」はこちらへ
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