Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
stemは「茎」あるいは「幹」で、cellは「細胞」。stem cellは「幹細胞」。木の幹から枝分かれするように、そこから特別な細胞が分化していくので、その名がついた。カタカナ読みは「ステム・セル」。とくに、人間の受精卵から発達するのがhuman embryonic stem cell(ヒト胚性幹細胞=ES細胞)。
ニューヨーク・タイムズ(2009年3月10日付)は、“Obama Lifts Bush’s Strict Limits on Stem Cell Research”(幹細胞研究について、オバマはブッシュの厳しい制限を緩和)と報じた。ここでのstem cellはES細胞を指す。オバマ大統領はブッシュ大統領が制限してきたES細胞の研究について、human cloning(クローン人間の製造)以外は〝解禁〟し、連邦政府の研究助成にゴー・サインを出した。この決定によって、ようやくオバマ政権とブッシュ前政権の違いが鮮明になった。
その結果、これまで水面下でくすぶってきたリベラル派と保守派の対立が表面化、ES細胞研究をめぐって激しい議論が巻き起こっている。
USニュース・アンド・ワールドリポート(同年3月14日付)は、“Embryonic stem cell research is poised to expand. Could an array of treatments or cures come next?”(ES細胞研究はさあ拡大へ。治療方法に道が開けるか)と前向きの見方を紹介した。つまり、この研究が前進することで、パーキンソン病やアルツハイマー病など10に上る難病治療の可能性に期待が持てるという。
ブッシュ政権下でES細胞研究が制限され、アメリカでのstem cellの研究は、世界の競争から著しく遅れてしまった。ES細胞に代わって、induced pluripotent stem cell(人工多能性幹細胞=iPS細胞)が注目を集めたが、本来、ES細胞とiPS細胞は、両方とも研究する必要がある。アメリカは今後〝追撃〟を開始すると、研究者は意気込む。
これに対して、ニューヨーク・タイムズ(同年3月14日付)は、共和党が州議会の多数派をおさえている州で、大学での研究に州政府の助成を禁止する法案が可決される動きが出ており、“Some states are considering legislation that would define an embryo as a person.”(胎芽を〝ひとりの人間〟と定義する法律を検討している州もある)と報じた。
これは、共和党のanti-abortion(妊娠中絶に反対)の路線と軌を1つにする。胎芽はやがて胎児(fetus)に成長するので、議論の争点は、“the value of human embryonic life”(人の胎芽生命の価値評価)をめぐる倫理。さらに、キリスト教右派は、“President Obama made the wrong move by opening the door to human cloning.”(オバマ大統領は、クローン人間製造に道を開くという誤った一歩を踏み出した)と非難している。
だが、研究者サイドでは、リベラル、保守派を問わず、口角泡を飛ばす政治家の多くが、embryoとは何か、さらにstem cellとは何か、さっぱりわかっていないなあ、という批判もある…。The Sankei Shimbun (March 30 2009)
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