2011年12月17日土曜日

netroots


Illustrated by Kazuhiro Kawakita


netはinternet(インターネット)。rootsはgrassroots(草の根、複数形)のroots(根)と同じ。netrootsはgrassrootsのネット版で、「ネットの草の根」。カタカナ読みは「ネットルーツ」。netroots movementはネットを使ったgrassroots movement(草の根運動)で、ネットの一般ユーザーを対象にしたPRや勧誘、資金集めなどの活動を指す。
ナショナル・ジャーナル(2009年1月6日付)のブログに“The Netroots Heart Panetta”(ネットの草の根支持者らはパネッタ氏を〝心に留める〟=heartは「心」だが、dここでは動詞として用いる。ちょっと古臭い表現)と出ていた。パネッタ氏は、クリントン政権時代の大統領主席補佐官で、オバマ大統領がCIA(中央情報局)の長官に指名した人物。だが、諜報分野の経験はゼロ。なぜ、そんな人物を指名したのかというと、民主党の草の根支持者らが、ブッシュ政権下のテロとの戦いで、イスラム系の容疑者をwaterboarding(板に縛り付けて水責めにするプロの尋問方法)などの拷問にかけて自白を迫ったCIAの幹部の一掃を求めているからだ。そこで、パネッタ氏の登用で、上記の見出しの表現が登場したわけ。(注:結果的には、パネッタ長官の指揮下で、米軍は2011年5月1日、パキスタンでウサマ・ビンラーディンを殺害。その後、パネッタ氏は国防長官に就任した)
オバマ政権にとって、netrootsは大統領選挙の勝利をもたらした大切な支持母体の1つ。ワシントンポスト(2008年12月28日)は“Will He Bring Change.gov We Can Believe In?”(オバマ氏は、信頼できる政府の変革をもたらせるか)の記事で、“He can also look to the netroots movement that helped turn the tide against conservatism over the last six years.”(彼は、過去6年間保守派の一掃を手伝ったネットの草の根運動に再び期待できる)と述べている。
ウイリアム・サファイア氏の「政治辞典」(2008年)によると、grassrootsが政治用語になったのは1912年ごろ。この言葉が脚光を浴びるようになったのは、民主党のルーズベルト大統領(1882~1945年)を引きずり降ろそうと、共和党が大衆動員を掛けたことから。呼びかけには、当時のニューメディアであるラジオが効果を挙げたという。
netrootsは、もちろんインターネットの普及と密接な関係があるが、1993年が初出という。こちらは、民主党が圧倒的に先行。2004年の大統領選挙のときに、ハワード・ディーン氏が、ブロガーを動員して多額の選挙資金を集めたことで、一躍政界で注目されるようになった。
さて、ここでいつものPL(punch line=落ち)の替わりにPR。このコラムは2006年6月からスタート、netrootsの読者から多数の意見や感想をいただきました。今回、それらを参考にして、2008年11月までの掲載分に加筆、修正。産経新聞出版から「アメリカの今がわかる本、Today’s English Usage」(定価、税込み1500円)として発売しました。カワキタ・カズヒロ氏のイラストも満載。楽しい1冊になりました。The Sankei Shimbun (January 25 2009)

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