2011年12月31日土曜日

blooper


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

                       
blooperは「へま」や「ドジ」。とくに公衆の面前で恥をかくような失敗。ウィリアム・サファイア氏の「政治辞書」(2008年)では、反対派からヤリ玉に挙げられる政治家のslip of the tongue(失言)やunthinking comment(うっかり発言)を指す。カタカナ読みは「ブルーパー」。
政治家のblooperは、日本でも枚挙に暇がない。たとえば、麻生首相が「(医師には)社会的常識がかなり欠落している人が多い」と発言して、言葉が不適切だったと謝罪したのもblooper。
米国ではブッシュ大統領が、歴代大統領の中でも群を抜いてblooperを連発。インターネット上には“Funny Bush Quotes and Bush Bloopers”(おもしろブッシュの引用句とブッシュの失言)などのサイトも開設され、“Bushisms”(ブッシュ語)という言葉も生まれた。
ブッシュ氏のblooperは、大統領就任前から始まる。“They misunderestimated me.”(2000年11月発言)。これは、misunderstand(誤解する)とunderestimate(過小評価する)をごちゃ混ぜにして使ったもので、「かれら(批評家)は私を、間違って過小評価した」と言いたかったようだ。
教育者から問題視されたのは、“Rarely is the question asked: Is our children learning?”(2000年1月)。ブッシュ氏が言いたかったのは、「この質問はめったにされない。つまり、子供たちは学習しているか?」だが、childrenはchildの複数形だから、動詞はareになる。確かに、isで受けるこの質問はめったにないだろうが…。
大統領になっても“Border relations between Canada and Mexico have never been better.”(カナダとメキシコの国境の関係は決して好転していない=2001年9月)と発言。そりゃそうだ。カナダとメキシコは国境で接していないから。
blooperの語源はbloop。電波障害によって、ラジオの音声が乱れて変に聞こえることをさす。この音の連想から、野球でテキサスヒットをblooperという。
ブッシュ大統領は、2008年11月11日付のCNNのインタビューで在任8年間を振り返り、“I regret saying some things I shouldn’t have said.”(私は、言うべきでなかったことを言ったのを後悔している)と述べた。大統領が自ら挙げたbloopersは、9・11中枢同時テロ直後の会見で、オサマ・ビンラーディンを主犯だと名指しして、“There’s an old poster out West that said, ‘Wanted, dead or alive.”(西部の古いポスターにあるように、「生死に関わらず、指名手配」だ)。もう1つは、2003年7月にイラクで米兵への武装勢力の攻撃が激化したのに対して、“Bring ’em on.”(かかってこい)と感情的になったこと。「家内から、『大統領は発言に気をつけないといけない』と注意された」と明かした。Bush Bloopersは、数々の笑いを提供した。The Sankei Shimbun (December 7 2008)

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