Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
covertは古仏語が起源で、本来の英語ではcovered(覆われた)という意味。ここでは、スパイ用語でcovert operations(秘密作戦)を指す。これは、ボブ・バートン著『最高機密:諜報と情報の辞典』によると、“Operations planned and executed so as to conceal the identity of, or permit plausible denial by, the sponsor.”(首謀者の正体を秘匿するか、口先の否定を許すように計画され、実行される作戦)をいう。そこで、covert warは「秘密作戦による戦争」。カタカナ読みは「コウヴァート(またはカヴァート)・ウォー」。
英ガーディアン(2012年1月11日付)は、“This covert war on Iran is illegal and dangerous” (イランに対する隠密裏の戦争は非合法で危険だ)と報じた。“As another Iranian nuclear scientist is assassinated, the mystery thickens as to whether the Mossad, US or the UK are involved.” (もう1人のイランの核開発科学者が暗殺され、イスラエルの諜報機関モサドや米・英が関与しているか否かについて、謎は深まる)と指摘した。この事件は、バイクに乗った男が科学者の車に磁石付き爆弾を装着して爆殺したもの。2010年の1月と11月に続き3人目の核科学者の暗殺事件で、イラン側はイスラエルと米国を名指しで非難。当然ながら両者は関与を否定した。
ところで、イランの核開発問題は中東情勢のカギを握る懸案であり、イスラエルは米国とともにイランへの軍事攻撃を検討してきたとされる。クリスチャン・サイエンス・モニター(2011年12月28日付)は、“An accelerating covert war with Iran: Could it spiral into military action?”(イランに対する隠密戦争の激化:軍事行動への急旋回の可能性はあるか)と警告。そうなれば、covert warではなくovert(諜報用語でopen=公然の)warとなり、取り返しのつかない事態へ突入する。
イラン側のホルムズ海峡封鎖を威嚇する一方、米国による各国への経済制裁強化の呼び掛けで欧州連合(EU)がイラン産原油の禁輸を決定するなど―表の外交の世界でも事態は緊迫の度が深まっている。
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