2013年5月3日金曜日

toxic 人間をtoxicなんて呼ぶなよ!


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 toxicの語源はギリシャ語のtoxikonで、毒矢の矢じりに塗る毒を指す。そこで、toxicは「有毒な」「有害な」という意味の形容詞。実際に毒物を含むtoxic chemicals(有毒化学物質)とかtoxic waste(有害廃棄物)などと使う。また、この言葉は比喩的にも使われる。
 米有力投資銀行ゴールドマン・サックスの業務執行役員グレッグ・スミス氏は辞職するに当たって、ニューヨーク・タイムズ(2012年3月14日付)のオピニオン面に、“Why I am leaving Goldman Sachs”(私がゴールドマン・サックスを去る理由)という一文を寄稿。その中で、“I can honestly say that the environment now is as toxic and destructive as I have ever seen it.”(正直言って、今の環境は私がこれまで見たことがないほど有害かつ破滅的である)と述べた。どういうことか?
 ゴールドマン・サックスの長年の成功を支えてきたのは企業文化であるとした上で、“It revolved around teamwork, integrity, a spirit of humility, and always doing right by our clients.”(それは、チームワーク、誠実さ、謙虚な精神、そしていつも顧客のために正しい仕事をすることを主軸にしてきた)と指摘。だが、今ではその文化を捨ててしまって〝金儲け主義〟に走り、顧客を食い物にするまでに堕落した、と批判している。
 さて、家庭問題で一番切実なのがtoxic parent(有害な親)。子供の気持ちを無視するだけでなく、言葉でいじめ、果ては暴行や性的虐待にまで及ぶような親を指す。ニューヨーク・タイムズ(2009年10月20日付)は、“When parents are too toxic to tolerate”(親が我慢できないほど有害になるとき)との精神医学者の論文を掲載。その中で、“It is no stretch to say that having a toxic parent may be harmful to a child’s brain, let alone his feelings.”(有害な親を持つことは、子供の感情はいうまでもなく、脳にまで害を及ぼすようだ、といって過言ではない)と述べている。虐待を受けた子供は生涯trauma(心的外傷)を背負わされるのだ。親の責任は重大である。

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