outrageous(形容詞)の名詞形はoutrage。語源はout+rage(怒り)ではなく、outr (ultra)+ageで"the passing beyond reasonable bounds"(度を越すこと)を指す。つまり、outrageousは「常軌を逸した」という意味だが、転じて「乱暴な」「非道な」となる。だが、動詞としてのoutrageにはもう一つの意味がある。ずばりrape(強姦する)である。このニュアンスを理解してコンテキストの中で意味をくみ取る必要がある。
日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が、戦時の慰安婦問題について自らの見解を述べたことについて、米国務省の報道官が批判した。
Kyodo News International (May 16, 2013) は、“Hashimoto's remarks on sex slaves ‘outrageous’: U.S. State Dep't”と報じた。このoutrageousはどんなニュアンスを持っているのか?
そもそも、軍隊に従属した兵士の性処理のための女性を「慰安婦」と捉える論理と、sex slaves(セックスの奴隷)とする論理は、最初からすれ違っていると言わねばならない。というのは、「慰安婦」は男性の立場からの言葉であり、sex slavesは女性の側に立った言葉であるからだ。
そこで、Jen Psaki氏(女性報道官)が、記者会見でどう発言したのか見てみよう。
"As the United States has stated previously, what happened in that era to these women who were trafficked for sexual purposes is deplorable and clearly a grave human rights violation of enormous proportions."(合衆国は以前から主張しているように、その時代に性的目的のために違法に取引された女性の身の上に起こったことを、痛ましいことであり、明らかに著しい人権侵害だったと考えている)
つまり、Psaki氏が問題にしているのは、trafficking(人身売買)と、その後のwhat happened to these womenであり、それがいかなる文言を使うにしても容認する発言はoutrageousであると感じたのである。「言語道断」との訳を見かけたが、「(女性の人権を踏みにじる)あきれた暴論」といいたいようだ。彼女の頭をよぎったのはrapeであろう。
アメリカで深刻な問題となっているのが、米軍の内部で横行する兵士のsexual assault(性的暴力)である。そのほとんどのケースが、男性兵士が酒に酔って女性を襲うというもので、とくにイラクやアフガニスタンなど生死を争う厳しい環境で後を絶たないのだ。
橋下氏は、在日駐留米軍に対して、兵士の性処理のための風俗業の活用を説いた、だが、実際に性的暴行などの問題を起こす兵士は精神障害を起こして追い詰められており、沖縄での相次ぐ事件を見ても分かるように、米軍はもはや、帰還兵を自由に外出させること自体さらに問題を引き起こすことになりかねない、と深い懸念を持っている。