Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
gayは「同性愛者」で、troopは「軍隊」。gay troopは、直訳すれば「同性愛者の軍隊」。だが、同性愛の兵士ばかりを集めた軍隊、と早合点してはいけない。「同性愛が〝公認〟された軍隊」のことである。カタカナ読みは「ゲイ・トゥループ」。
米国の連邦議会では、米軍兵士の同性愛をオープンに認めるかどうかをめぐる議論が永らく続いて来た。同性愛に対する米軍の現在の方針は、“Don’t ask, don’t tell.”(訊ねず、語らず)。これは、1993年にクリントン政権下で法制化されたもの。新兵募集の際に、当局は個人のsexual orientation(性的志向)について訊ねることなく、入隊後も調査をしない。一方で、兵士の側も同性愛を公言しないこと、そうした行為をしないことに同意させられる。違反すれば除隊である。
この方針について、同性愛の人権団体は「性差別」だと批判してきたが、米軍のイラク駐留問題が長期化し、兵士の死傷者が増え続けるなかで再び問題として浮上。2007年2月末に、民主党議員から「性差別の撤廃」を求める法案が提出された。民主党のカーター元大統領は、5月15日に法案を支持する声明を出し、「現在、推定6万5000人の同性愛の男女が祖国のために奉仕している」としたうえで、“Don’t ask, don’t tell.”が施行されて以来、「1万1000人が除隊させられた」と、国防総省を批判した。
そして、オバマ政権となってから、President Obama, Secretary of Defense Leon Panetta, and Admiral Mike Mullen, Chairman of the Joint Chiefs of Staff, sent the certification required by the Repeal Act to Congress on July 22, 2011, setting the end of DADT for September 20, 2011.(オバマ大統領とレオン・パネッタ国防長官、マイク・マラン統合参謀本部議長は、2011年7月22日の議会での廃止法の成立に基づいて同年9月20日をもって“Don’t ask, don’t tell.”を終了した。その結果、性差別が撤廃され、米軍の中で同性愛者のcoming out(公けの告白)が急増することになった。
一方、ピーター・ペース統合参謀本部議長は、廃止法案が提出された当時、“I believe homosexual acts between two individuals are immoral.”(私は同性愛行為が不道徳だと思う)と述べ、人権団体から「同性愛者を侮辱する発言だ」と〝袋叩き〟に遭った。また、共和党大統領候補のマケイン上院議員ら保守派は、“Gay troops pose an intolerable risk to national security.”(同性愛公認の軍隊は安全保障にとって容認できないリスクだ)と反対した。共和党は、2012年の米大統領選挙に向けて“Don’t ask, don’t tell.”を復活を公約に掲げて闘うことになりそうだ。
米軍では18世紀の独立戦争以来、sodomy(男色)を禁じてきた。1940年代から80年代まで、入隊時に同性愛者を除くように調査・審問したのである。それだけに、ベトナム戦争のときには、同性愛を偽って徴兵を逃れた者もいた。その後、ウーマンリブが活発化して女性兵士が増加し、米軍にも「性の革命」が浸透する。だが、その後も「同性愛は軍務と相容れない」とする考えは根強く残り、“Don’t ask, don’t tell.”は、軍の規律と兵士の人権との妥協の産物として生まれた。
米軍の現役兵は約142万人だが、そのうち6万5000人の同性愛者は決して小さな数字ではない。民主、共和党を問わず、「祖国のための軍務で問題にすべきは能力や奉仕精神であって、性的志向ではない」とする声もある。The Sankei shimbun(June 10 2007)「グローバル・English」はこちらへ
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