2012年11月11日日曜日

bad day ついてない日って、あるよね。

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 bad dayはgood dayに対する語。米国では人と別れるときなどに、“Have a good day!”と声をかける。あなたにとって「よい日でありますように」という意味。bad dayは「悪い日」だが、すべての人にとって悪い日というのはないから、ある人にとってのunlucky day(ついてない日)である。
“A bad day fishing is better than a good day working.”(釣りに行って何も釣れない厄日でも、バリバリ働く好調な日よりもましだ)ということわざがある。人によって意見の分かれるところだが、bad dayのニュアンスはまさにこれ。
 bad dayには先駆けの語として1990年代に流行ったbad hair dayがある。“You have a bad hair day.”というと「今日は髪がクシャクシャじゃないか」という意味から転じて「すべてがうまく行かない日」になった。
さて、2006年に欧米、日本でも大ヒットしたのが“Bad Day”。カナダ生まれのミュージシャン、ダニエル・パウターのポップソングだ。日本では「ついてない日の応援歌」という副題がつけられている。何もかもうまくいかなくて落ち込んでいる友人を“You had a bad day”(ついてなかっただけさ)と励ます内容で、「この曲を聴いていると元気が出てくる」というのが圧倒的なファン評。米国では2006年、Billboard Hot 100をはじめヒット・チャートの一位を軒並み独占、テレビやラジオでこの曲が流れない日はなかった。
“Sometimes the system goes on the blink/ And the whole things turns out wrong/ You might not make it back and you know/ That you could be well oh that strong/ And I’m not wrong”
 systemは、多くのものが組み合わさってできた体系が原義で、ここではthe systemで世間とか世の中の意味。
「時には、世の中うまくいかないこともあるさ。何もかも裏目に出る事だって。挽回できないかもしれないけれど、強気を出せばうまくやれる、と君は分かっているじゃないか。僕の言う事は間違っちゃいないさ」
 Bad Dayは、プロ・スポーツの試合でチームが敗退するたびに競技場で流される定番の曲にもなった。
 米国人の生き方は、常にpositive(前向き)が尊ばれ、逆境に陥った時にnegative(後ろ向き)になる人間はunderdog(負け犬)として軽蔑される。厳しい競争社会を生き残るためには、自力でbad dayをgood dayに変える強い精神力が求められるのだ。
 米プロバスケットボール協会(NBA)の元スーパースターで、1991年にHIVの感染を告白して大きな話題を呼んだマジック・ジョンソン氏は、実業家として活躍する現在の心境をこう語る。「私はビジネスマンであることが好きだ。働くことが好きなんだ。I never have a bad day.(私には決して“ついてない日”などない)」。The Sankei Shimbun (October 1 2006)

 

2012年11月8日木曜日

leak A small leak can sink a great ship!

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 leakは「漏れる」「漏らす」、または名詞で「漏洩」。カタカナ読みは「リーク」。ここでは、漏れるのは情報でnews leak(ニュース漏洩)。新聞記者からすればscoop(すっぱ抜き)となるが、抜かれた側では、「漏らしたのは誰だ」と大騒ぎになる。
 イラク戦争後、ブッシュ政権を揺るがしたのが、“Plame affair”(プレイム事件)。またの名を“CIA leak case”(CIA工作員実名漏洩事件)。ブッシュ政権は2003年3月19日、大量破壊兵器の存在を理由にイラクに侵攻したが、結局大量破壊兵器は発見されなかった。事前調査を担当したジョセフ・ウィルソン元駐ガボン大使は、同年7月6日付のニューヨーク・タイムズに寄稿、イラクの核開発に関する報告が歪曲されたと世論に訴えた。ホワイトハウスの面子は丸潰れ。その後、7月14日に政治評論家のロバート・ノバック氏が書いたコラムに、ウィルソン氏の妻バレリー・プレイムさんがCIA(中央情報局)の工作員であり、その縁故でウィルソン氏は調査を担当したと暴露された。これは情報部員の身分を保護する法律に違反する。情報提供者としてアーミテージ前国務副長官、大統領のカール・ローブ次席補佐官、ルイス・リビー副大統領首席補佐官らブッシュ政権高官の名前が浮上。特別検察官が置かれて捜査の結果、2007年3月にリビー氏が偽証罪などで起訴され、罰金25万㌦と禁固2年6カ月の実刑判決を受けた。
 ところで、leakする人はsecret source(秘密の情報源)。取材源の秘匿はジャーナリストの基本的モラルであり、それが表面に現れることはまれ。その最大の例外が、ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件(1972年)で、ワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード記者に情報を提供した“Deep Throat”。30年以上に渡って身元が秘匿されが、事件当時FBI(連邦捜査局)の副長官だったマーク・フェルト氏が2005年5月に、“I’m the guy they used to call Deep Throat.”と名乗り出た。世紀のスクープ記事の情報源が明らかになり、世間は再び驚かされた。
 だが、leakが不注意による場合もある。第二次大戦中の「メイ事件」は、米国では悪名高い。1943年、米議会下院の軍事委員会メンバーのアンドリュー・メイ議員は、太平洋艦隊を視察した後、「日本軍の対潜用爆雷は非常に浅いところで爆発するので、米海軍の潜水艦は攻撃を免れている」と記者会見で発言。通信各社がこれを打電し、多くの新聞がニュースとして報じた。日本軍が早速、起爆深度を変更したのは言うまでもない。米潜水艦部隊の司令官、チャールズ・ロックウッド海軍中将は、その結果、潜水艦10隻と乗員800人が犠牲になったと推定。当時のルーズベルト政権は、メイ議員の暴露にカンカンになった。
“A small leak can sink a great ship.”(小さなleakが大船を沈める)と言ったのは、建国の父、ベンジャミン・フランクリン。まさに至言である。The Saneki Simbun(October 15 2006)

2012年11月7日水曜日

househusband 家庭を守る夫は平和の象徴だ

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 houseは「家」でhusbandは「夫」。housewife(家庭の主婦)が伝統的に行ってきた家事・育児を専業にする夫を指すのがhousehusband。カタカナ読みは「ハウスハズバンド」で、日本語では「主夫」。アメリカでは20世紀の後半から急増し、今では珍しくない。
 ウーマンリブの活動家らは、housewifeが性差別を助長する言葉だと糾弾し、それに代わってhomemakerという言葉を採用した。男女を問わず家事をする者という中立的な言葉で、英和辞書には「家政担当者」の訳が載っている。political correctness(差別廃止を訴える政治的正当性、 ㌻)からすると、househusbandも「差別用語」である。
 househusbandは、嘲笑や自嘲をともなって使われることが多い。Wordreference Forumsというネットの意見交換では、「unemployed(失業)のことだ」という指摘があった。つまり、失業した夫の代わりに妻が働きに出て、結果的に夫が家事・育児を引き受けることになる、というわけだ。これは、一面の真理である。
 米国では共働き夫婦において、妻の方が夫よりも昇進し高給を取るケースが少なくない。長期出張や単身赴任など第一線で妻が活躍するには、夫の理解と援助が必要。househusbandはその1つの表れだ。家事に対しても若い世代では、女性の仕事だという伝統的な考えが薄れてきている。最近は、日本でも子供の教育を女房に任せきりにせず、自ら買って出る男性が増えているが、この傾向は米国が先行している。
 CNNのキャシー・スロボギン記者は、“For a working mother, it’s a fantasy.”(働く母親には夢だ)と語っている。職場から帰宅すると、家の中は掃除が行き届き、洗濯も終わって、台所には暖かい夕食が用意されている。子供の宿題もすでに完了しているから、小言をいう必要もない…。
元新聞記者のアド・ハドラー氏は、妻が昇進したため主夫になった経験をもとに、小説“Househusband”(2004年)を出版。家事の楽しさを描いて、一躍人気作家となった。CNNのインタビューに対して、“My job is the toughest I’ve ever done.”(仕事は今までで一番大変)というのが主夫の感想。だが、よい面もある。“I don’t carry the stress with me every day of earning the money that keeps the family going.”(家庭生活を維持するために毎日カネを稼がねばならないストレスから解放される)ということ。
もっとも、“Sometimes I forget I’m a man. And she forgets she’s a woman. And we’ll be laying in the bed and looking at each other and go, ‘Oh yeah.’”(時に私は自分が男であることを忘れ、妻は自分が女であることを忘れている。ベッドに横になり、見つめ合って初めて『ああ、そうなんだ』と思う)と告白している。The Sankei Shimbun(September 24 2006)

2012年11月5日月曜日

ticket Obama defeats Romney!

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 ticketは日本語でも「チケット」、一般的には切符や入場券のこと。だが、政治用語では選挙における政党の公認候補者、とくに1組になって立候補する者を指す。勝てると予想される候補の組み合わせがdream ticket。
 米大統領選挙では、大統領と副大統領は一緒に選ばれるので、今回の民主党はthe Obama-Biden ticket(オバマ大統領とバイデン副大統領の組み合わせ)。
 共和党についてワシントン・ポスト(10月20日付)は、“The Romney-Ryan ticket is the first Republican presidential campaign in history without a Protestant candidate.”(ロムニー大統領候補とライアン副大統領候補の組み合わせは、共和党史上初のプロテスタント候補のいない大統領選挙戦である)と報じた。
 ロムニー氏はモルモン教徒で、ライアン氏はカトリック教徒。米国の支配層とされてきたWASP (White Anglo-Saxon Protestant =アングロサクソン系白人新教徒)から大統領候補の組み合わせを選ぶという暗黙の了解の伝統は、保守派においても宗教の側面から崩れてしまった。保守派の大票田であるevangelicals(福音主義者)が、果たして彼らに投票するかが焦点の1つとなった。
 ところで、ウイリアム・サファイアの政治辞典によると、ticketはballot(投票用紙)の意味がある。政治においてto have the tickets(チケットをもっている)は、「勝つだけの票がある」という意味。さて、今回の選挙、the Obama-Biden  ticketがthe ticketsを確保、オバマ大統領が再選を果たした。






quackery 自分の欲望に負けてだまされる

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 quackeryは、英和辞書を見ると「いんちき療法」。カタカナ読みは「クワッカリー」。その元になった語はquack。アヒルの鳴き声を表す擬音で、動詞として使うと「クワッ(ク)、クワッ(ク)」と鳴く、という意味。これが名詞になると「にせ医者」「いかさま師」となる。その語源は16世紀のオランダ語のkwaksalver。「salve(膏薬)の行商人」という意味で、アヒルのように声高に膏薬の効能を唱えたが、ちっとも効き目がなかったから、「にせ医者」と蔑まれることになったのだろう。
 quackeryは厳密にいうと、医学的に治療できる根拠がない療法や薬のことで、効能を誇張した詐欺まがいの薬なども含まれ、米国では1916年にPure Food and Drug Act(食品医薬品・品質法)が成立するまで野放しだった。17、18世紀には、何にでも効くDuffy’s Elixir(ダフィーの万能薬)などが英国から輸入され大評判になった。そもそも何にでも効く薬などあるはずないが、その時代の人は素直に信じて騙された。そのなごりで、当時、万能薬として喧伝されたsnake oilは、今も「いんちき薬」の代名詞として使う。
 さて現在では、quackeryはalternative medicine(民間療法)や健康食品の分野に紛れ込んで蔓延している。いわくmiracle cures(奇跡の治癒)、psychic surgery(心霊手術)、faith healing(信じれば治る)など。また、インターネットや雑誌の広告では、女性向けにweight-loss(減量)が、男性向けにはpenis-enlargement(ペニス増大)が、それぞれいんちき商品を売りつけるための格好のテーマとなっている。とくに流行のダイエット関連の健康食品では、危険な薬剤として米食品医薬品局(FDA)が使用を禁じているものも売られていて、死亡被害まで出ている。
 そこで、quackeryを監視するために設立されたNPOの老舗が、Quackwatch。1997年からはウェブサイトも運営しており、問題のある療法や健康食品などを調査し、結果を公表するとともに、被害に遭わないように注意を呼びかけている。
 だが、quackeryの被害は後を絶たない。最近は、科学技術の急速な進歩で、「新しく開発された療法」と言われると、よほどの専門家でない限り判断がつきかねて、だまされるケースが多い。science(科学)にもとづくという謳い文句も、うっかり信用できない。科学に名を借りただけのpseudo-science(似非科学)が横行しているのだ。
 似非科学の特徴は、科学的な根拠を示さず、証明もなしに超常現象や神秘的な理論を説くところにある。とくに、~energy(~エネルギー)には要注意。いわく“psycho-spiritual energy”(心霊的エネルギー?)とか、“biocosmic energy”(生物宇宙エネルギー?)とか。“Science cannot explain.”(科学では説明できない)などと効能が説明してある場合は、似非科学に間違いなく、眉につばを付けてかからなくてはいけない。The Sankei Shimbun(October 22 2006)

2012年11月4日日曜日

news fast ニュースの断食

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 newsは「ニュース」。fastは形容詞では「速い」という意味だが、ここでは名詞で「断食」「絶食」のこと。「断食を中止する」というbreakfastが転じて「朝食」となったが、そのfast。そこで、news fastは「ニュースの断食」。カタカナ読みは「ニューズ・ファスト」。テレビ、ラジオのスイッチを切り、新聞も読まない。インターネットでニュースのチェックもしない。一切のニュースを遮断して、疲れ切った脳細胞を休めようというものだ。
 この言葉は、information revolution(情報革命)が本格的になった1990年代から登場した。世界中で過去30年間に発信されたニュース、情報の量は、それ以前に人類が蓄積した5000年分を越えてしまい、幾何級数的に増加しているという。そのため、最近では健康面からも情報過多の環境が問題視されるようになった。
健康的ライフスタイルの提唱者として有名なアンドリュー・ワイル博士は、ベストセラーの著書“8 Weeks to Optimum Health” (2006年改訂版、邦題『心身自在』)で、 “Unfortunately, most of the reported news is bad news. The emotional content of TV news can affect mood and aggravate sadness and depression.”(不幸にして報道されるニュースは総じて悪いニュース。TVニュースの内容は、われわれの気持ちに悪影響を与え憂鬱にさせる)と指摘。健全な精神を保つためには、ニュースからのday off(休日)を取ることを勧める。
 だが、これがなかなかできない。とくにニュースを商売のネタにする新聞記者は、ほとんどがnews addiction(ニュース中毒)に陥ったnews junkie(中毒患者)。半日もニュースを見ないと、何か起こっていないか知りたくてムズムズしてくる。さらにnews fastが続くと、心配になって寝られなくなる。〝ほとんどビョーキ〟だが、この傾向は実際にInformation Fatigue Syndrome(IFS=情報疲労症候群)と呼ばれているのだ。
 IFSは、英国の心理学者、デイビッド・ルイス博士が1996年、ロイター通信社の“Dying for Information”(情報飢餓)と題する報告書をまとめたときに初めて使った。過剰な情報に曝され、その処理に追われて疲れ果てる。その結果、「分析能力は麻痺してしまう。だが、情報に対する飢餓感はなくならず、不安感や不眠症に悩まされるようになる」という。
 IFSに対する処方箋もinformation fast(情報断食)。technostress(テクノストレス)を軽減するため、コンピューターのスイッチを切って、奔流のように押し寄せる情報の波から一時的にでも避難し休息をとることが必要だ。コンピューター・ソフトウェアの巨人、マイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツ氏も、パソコンから離れて思索にふける“think week”(考える週)を設け、information fastしているそうだ。The Sankei Simbun(October 29 2006)

2012年11月3日土曜日

adopted child 子供が大好き!

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 adopted childは「養子」。カタカナ読みは「アドプティッド・チャイルド」。動詞のadoptは、英和辞書では「採用する」「採択する」の意味が最初に書いてある。たとえば、議会で決議を採択するのは、adopt a resolution。だが、アメリカン・ヘリテージ辞書など米国の辞書では、“take into one’s family through legal means”(正式な方法=養子縁組で家族にする)が最初に来る。こちらの意味の方が身近なためだ。「養子縁組」という名詞はadoption。「養親」はadoptive parentsだ。
2006年には、人気歌手マドンナがアフリカ南部のマラウイから黒人の男児を養子として迎え、世界的な話題になったが、米国ではこのようなcelebrity adoption(有名人の養子縁組)が盛んだ。映画俳優では、アンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットのカップル。また、日米関係で著名なリチャード・アーミテージ元国務副長官も6人の養子を迎えている。
 移民同士の混血が進む米国では、血筋にこだわりを持たない人が多く、養子を持つ家庭は8軒に1軒。さらに、毎年約12万人が養子縁組されるという。そのうち海外から子供をもらう国際養子縁組は、2005年に約2万3000人。国別では中国がトップで、以下ロシア、グアテマラ、韓国と続く。
 子供を養子に出す側としては、経済的理由が大きい。最近ではシングルマザーで養育できないケースが増えている。国際養子縁組の場合、貧困にあえぐ国々では、子供を養子に出すことが「口減らし」になるという現実がある。
 養子を取る最大の理由は、夫婦間の不妊。だが、実子がいる場合でも、養子縁組するケースが少なくない。そのなかには、宗教的な使命感や博愛主義の立場から孤児や障害児を養育する人がかなりいる。また、家族は多いほうがいい、と考える人もいて、理由は様々。養子をもらった世帯には1万ドルの税額控除があり、州によっては同性カップルの養子縁組も可能だ。
 これだけ養子縁組が盛んな米国だが、養子に対する「告知」という大問題は避けて通れない。“You were adopted.”(お前はもらわれてきた子だ)とは、簡単に言えることではない。青少年心理の専門家は、子供たちが養子とは何かを理解できるようになったときに、養親が直接告白するのが最もよい、と指摘している。
 告知の際の言葉使いは微妙である。real mother、father、parents(本当の母、父、親)という言い方は好ましくない。養親はfalse(にせもの)という印象を与えるからだ。そこでbirth mother(生みの母)、biological parents(生物学上の親)などの表現を使うべきだとしている。また、養子に行った子供と生みの親との「再会」をreunion(動詞はreunite)と呼ぶが、子供だけでなく生みの親にも育ての親にも心理的葛藤をもたらす難しい問題である。The Sankei Shimbun (November 5 2006)