Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
empathyの語源は、19 世紀に生まれたドイツ語の美学・心理学用語Einfühlung。einは英語のin(中)で、fühlungはfeeling(感情)に相当し、日本語訳は「感情移入」または「共感」。これが、英訳されたときには、ギリシャ語系のem(中)という接頭辞とpathos(パトス)に由来する-pathyに置き換えられた。カタカナ読みは「エンパシー」。
この言葉は、アメリカン・ヘリテージ辞書によると、“Identification with and understanding of another’s situation, feelings, and motives”(他人の境遇、感情、動機を自分のことのように認識、理解すること)と定義される。
民主党の大統領候補バラック・オバマ氏は、大統領になろうとした動機を“the basic idea of empathy”と説明。“If we see somebody down and out, we care for them.”(誰かが転落し、落ちこぼれるのを見れば、面倒をみたいと思う)と語った。オバマ氏はこの思いを母親から受け継いだという。“She said, imagine standing in their shoes. Imagine looking through their eyes.”(彼女は、人の身になってみなさい、彼らの目を通して見てごらん、と言った)。
ところで、クリントン元大統領が1992年4月、まだ民主党の大統領候補を目指していたころ、エイズ患者らに関して“I feel your pain.”(あなたの痛みを感じる)と述べ、その後この言葉は同情を示す流行語になった。empathyはさらに、自然な感情を越えて哲学的、宗教的な色彩を帯びる。
オバマ氏は、黒人に対する人種的偏見と戦った公民権運動指導者キング牧師(1929~68)の〝後継者〟を自負し、自身の演説にも頻繁に牧師の言葉を引用してきた。今年1月のキング牧師の日には、ゆかりのジョージア州アトランタ市のバプティスト教会で演説。その中で“empathy deficit”(共感の欠如)について、“an inability to recognize ourselves in one another; to understand that we are our brother’s keeper; we are our sister’s keeper; that, in the words of Dr. King, we are all tied together in a single garment of destiny.”(お互いを認めることができないこと。われわれが兄弟・姉妹の支えとなることが理解できないこと。キング博士の言葉を借りれば、「われわれは運命という覆いの中でみな結ばれている」ことが理解できないこと)と説明した。
だが、オバマ氏のempathyに疑問を投げかける声もある。クリスチャン・サイエンス・モニター(2008年8月28日付)は、“A president, not a savior”(大統領であって救済者ではない)というケイトー研究所のジーン・ヒーリー副所長の寄稿文を掲載。ヒーリー氏は、“noble sentiment”(高貴な感情)としながらも、大統領は“Empath-in-Chief”(最高の共感者?)ではなく、合衆国憲法を護持する“Commander in Chief”(最高司令官)だと述べている。The Sankei Shimbun (September 14 2008)「グローバル・English」はこちらへ
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