Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
greedは「貪欲」という名詞。カタカナ読みは「グリード」。語源的にはgreedy(貪欲な)という形容詞が先に生まれた。“He is greedy.”(やつは欲張りだ)などという。アメリカン・ヘリテージ辞書には、“An excessive desire to acquire or possess more than what one needs or deserves, especially with respect to material wealth.”(自分の必要や、受け取る値打ち以上に欲しがり、所有したがることで、とくに物質的富についていう)と定義。つまり、カネ儲けへの貪欲な執念。
AP通信(2008年9月16日)は、“Republican presidential candidate John McCain says Wall Street’s financial turmoil is the result of unchecked corporate greed.”(共和党の大統領候補ジョン・マケイン氏は、ウォール街の金融の混乱は、野放しにされた企業の貪欲の結果であるという)と報じた。前日の15日には、米大手証券のリーマン・ブラザーズが経営破綻した。いわゆる、住宅バブル崩壊よる一連の金融危機の発端であるが、マケイン氏は、バブルに乗じてボロ儲けを狙った金融機関の姿勢を厳しく批判。“We’ re going to put an end to the reckless conduct, corruption and unbridled greed that has caused the crisis on Wall Street.”(ウォール街の危機の原因となった向こう見ずな行動と腐敗、制御のきかない貪欲に終止符を打つ)と述べた。
greedは、カトック教では、“one of the seven deadly sins”(7つの大罪の1つ)とされ、キリスト教が浸透する米国社会では〝悪徳〟とみなされる。けれども、その一方で、“The business of America is business”(アメリカの本業はビジネス)と、クーリッジ大統領(1872~1933)が言ったように、ビジネスに最大の価値が置かれ、市場での競争に打ち勝って金持ちになることが、最高のアメリカン・ドリームとみなされる。
そこで、「カネを儲けて何が悪い」という反論がアメリカには根強くはびこる。その中心地がウォール街だ。オリバー・ストン監督の映画、“Wall Street”(1987)でマイケル・ダグラス扮する会社乗っ取り屋のゲッコーは熱弁を振るう。“Greed, for lack of a better word, is good. Greed is right. Greed works.”(ほかによい言葉がないが、貪欲は善だ。貪欲は正しい。貪欲は原動力だ)これは、一攫千金を狙って、この街にやって来る連中の本音であり、昔も今も変わることはないようだ。
新約聖書はこう戒めている。“For the love of money is the root of all evil: which while some coveted after, they have erred from the faith, and pierced themselves through with many sorrows.”(Timothy 6:10, Kings James Version)つまり、拝金主義は諸悪の根源である。貪欲に金を追い求めて、信仰を誤る者は、最後には自らを刺し貫いて、痛い目を見るのだ。まさに、その言葉通りの現実を目の当りにしている。The Sankei Shimbun(September 28 2008)
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