2015年8月29日土曜日

「キレる」をどう英訳する?



「キレる」は怒りの感情が、我慢の限界を超えて一気に爆発する状況を示す言葉で、angry(怒っている)という形容詞を使って、get angry at ~, with ~, または for ~(~に、~のためにキレる)でよい。angry の代わりに mad(狂った)を使えば、get mad at ~で「非常に怒っている」感じが出るでしょう。

「まじギレ」は、まじで(本当に)キレる(怒る)だから、She was really angry.(彼女はまじギレした)

英語的に最もニュアンスが近いのが、これ。怒りの爆発に重点を置いて、blow one’s top(蒸気が鍋のフタを飛ばす感じ)、さらにgo nuts(ぶちキレる感じ)。

「キレる」は俗に「プッツンする」などというので、この「キレる」瞬間のニュアンスを強調したい場合は、動詞の snap(パチッとかポキッと音を表す語)を使う。本来はsnap a stick(棒をポキッと折る)か、snap at the offer(申し出にパッと飛びつく)のように使うが、たとえば「堪忍袋の尾が切れた」は、My patient finally snapped. と訳せる。また、She snapped back angrily at him.(彼女はプッツンして彼に言い返した)となる。

「キレやすい」は get angry easily である。これが、get angry occasionally(頻繁にキレる)となると、これは精神的な病気とみなされる。


難問は「逆ギレ」。これはダウンタウンの松本人志の造語だが、彼の主張は「最近特に耳にする、よくみんな使っている逆ギレ。本来なら怒られ(キレられ)なあかんのに、逆にそれを防ぐがために、逆にこっちから怒るのが逆ギレや」(日経より)。これは「逆恨み」(unjust resentment)と同じニュアンスの言葉で、unjust anger(筋違いの怒り)。「本来なら怒られなあかん人が、逆に怒る」と考えると、He gets angry unjustly at someone who should be angry at him. となろうか。そこで、snapを使ってみると、He snaps back angrily at someone who should be angry at him. というのは、どうでしょうか? 

2015年8月25日火曜日

White nationalism ー Trump人気を支える本音



White nationalismは「白人国家主義」または「白人至上主義」(white supremacy)と訳される。意味は、白人が最も優れているという偏見に基づく人種差別主義。

The New Yorker (August 31, 2015)にEvan Osnos氏の“The Fearful and the Frustrated”(怖いし嫌なこと)の中で、米国でWhite Nationalismへの共感が共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏を押し上げる大きな勢力を形成している、と論じた。

トランプ氏は候補に名乗りを上げた6月16日、2000マイルの長城をメキシコ国境に築き、「問題多い人々の流入を食い止める」と豪語した。
“They’re bringing drugs. They’re bringing crime. They’re rapists. And some, I assume, are good people.”(やつらはヤクを持ち込み、犯罪を持ち込み、強姦者だ。もちろん、何人かはいいやつさ)

この言い分は、何の根拠もなく、いまだにトランプ氏は根拠を示していないが、野球帽をかぶったレーガン(大統領)気取りのパフォーマンスが、白人至上主義者に大いにウケたのだ。

On June 28th, twelve days after Trump’s announcement, the Daily Stormer, America’s most popular neo-Nazi news site, endorsed him for President: “Trump is willing to say what most Americans think: it’s time to deport these people.”(トランプ氏の宣言から12日後の6月28日、アメリカのネオナチのHP、Daily Stormerは「トランプはほとんどのアメリカ人が考えていることを言おうとしている。こいつらを追放するときが来た)
さらに、The Daily Stormer urged white men to “vote for the first time in our lives for the one man who actually represents our interests.”(同紙は白人に、やっとわれわれの利益を代表する男に、生まれてはじめて投票することを促した)

その後、トランプ氏はイラン問題に触れて、イスラエルへの支持を表明し、jew-lover(ユダヤ人好き。ユダヤ人は白人ではない)と批判されたが、白人至上主義者たちにとっては “white racial consciousness”(白人の民族意識)を高揚させる候補者となった。




2015年8月19日水曜日

「浮気の代償」をどう英訳する?


「浮気」は、和英辞書では「不貞」と解して unfaithfulness、また「不倫」として adultery である。そして、「代償」は compensation。「浮気の代償」を the compensation of unfaithfulness or adultery とすれば、その代償は、浮気相手あるいは配偶者への慰謝料を意味してしまう。これでは、「浮気の代償」から外れてしまう。

unfaithful であるというのは「浮気」の属性の一つに過ぎない。adultery(姦通)はいかにも古臭い言い方。浮気や不倫の具体的な事実は、an affair(「情事」と和訳される)、あるいは an extramarital affair(婚外交渉)。「浮気をする」は having an affair、またズバリ loving。

ところで、一般的に「浮気の代償は大きい」などという場合には、「浮気をした結果、支払わねばならなかったすべての費用」という意味になるから、この場合の「代償」は cost または price。

そこで「浮気の代償」は、正式な表現では the price of an extramarital affair で、ざっくりと「浮気の大きな代償」という場合には、the high cost of having an affair であろう。

さて、“Life is short. Have an affair”(「人生は一度。不倫をしよう」=日本語版)の標語で一躍有名になった不倫サイト、Ashley Madison のサイトがハッカーに攻撃され、個人情報が盗まれた。

その事件について、HUFFPOSTは8月19日、“EXPERTS: Ashley Madison Hack Data Is Real”(Ashley Madison のハッキングされたデータは本物:専門家)と報じた。

The website reportedly has as many as 37 million users, and gigabytes of names, addresses, credit card numbers and emails allegedly tied to the site were leaked onto the so-called "dark web" late Tuesday night.(このサイトは三千七百万人のユーザーがあり、それに関連する氏名、住所、クレジットカード番号、メールなど何ギガものデータが、いわゆる「ダーク・ウエブ」に漏洩された)
Ashley Madison's records could damage the reputations of politicians and public figures, not to mention ordinary people. (Ashley Madisonの記録は、一般人は言うに及ばず政治家や著名人の評判に打撃を与えるだろう)

"There could be genuine casualties as a result" of the leak, Graham Cluley, an independent security analyst, wrote in a blog post on Tuesday. "I mean suicide.”(この漏洩の結果、本当の被害が出るだろうと、セキュリティー・アナリストの Graham Cluley は火曜日のブログで書いた。「つまり、自殺だ」)


日本でも多数の利用者がいるそうで、これから「浮気の代償」が支払われることになりそうだ。

2015年8月18日火曜日

social bankruptcyー他人事ではない!


social bankruptcyは「ソウシャル・バンクラプシー」。「社会的破産」などと訳してはいけない。socialは実はsocial mediaの略。Wordspyによると、この言葉は、The condition of being so overwhelmed by social media that the only solution is to close all one's accounts(ソーシャル・メディアに圧倒されて、すべてのアカウントを閉める以外に解決策がない。といった状況)と定義している。すなわち、「SNS破産」。

どういうことか?今や複数のSNSのアカウントを持つのが当たり前の世の中で、Facebook、Google+、Twitter、Instagram、LINEなどコミュニティーごとに使い分けるのが常識になってきた。ところが、accounts が増え、friends も増え続けていくと、最初は得意になるが、段々返事を書くのが苦しくなり、やがてすべてのfriendsとコミュニケーションを維持することが出来なくなる。そして、最後に、“Help! I’m trapped in social media and I feel like I can’t get out!”(助けて、ソーシャル・メディアにハマって抜けられない)となってaccounts を閉鎖する状態が、social bankruptcyというわけ。

だが、すべてのaccountsを閉めた後はどうなるのか?やっと解放され、素晴らしい自由の天地が開けるのか?否、恐ろしい孤独がやってくるのだ。


During the event, a film called “Social Bankruptcy” showcased what life would be like without social media, and how it affects individuals. Social media is everywhere, and it’s unavoidable, having become a communication tool for the majority of society.(その辺の経緯が映画『Social Bankruptcy』で語られる:ソーシャル・メディアのない生活がどんなものか。それはどれだけ個々人に影響しているか。ソーシャル・メディアはどこにでもあり、社会の大多数のコムニケーションの方法となり、もはや避けられない)―Melissa Chandler, “Social networking vs. handwritten letters to remain connected,” The Commuter, March 9, 2015

2015年8月10日月曜日

erraticートランプにはイラつく!


erraticは「イラティック」。deviating from the usual or proper course in conduct or opinion(行動や意見が普通や常識から外れている)からで「常軌を逸した」とか「突飛な」と訳される。人物やその行動を批判する言葉で「イラつく」といったニュアンスがある。なぜイラつくのか?こちらの思い通りにならないからだ。

全米で今一番常軌を逸して、保守派共和党をイラつかせているのが、来年の大統領選挙で共和党の一番人気、不動産王のドナルド・トランプ氏。

ワシントンポスト(2015年8月8日)は、“GOP leaders say erratic attacks hurt Trump, but he vows to fight and win” (常軌を逸した攻撃がトランプに仇になる、と共和党の幹部はいうが、トランプ氏はあくまで戦い抜くと誓う)と報じた。

Trump’s erratic performance during and after the first Republican presidential debate last week sparked a backlash throughout the party Saturday and a reassessment of his front-running bid.(先週の第1回共和党の大統領候補討論会でのトランプの常軌を逸した行動は、土曜日に党内で反発を招き、先頭を走るトランプを候補から外せとの議論が出ている)という。

The final straw for many was Trump’s comment on CNN late Friday that Fox moderator Megyn Kelly had “blood coming out of her eyes, blood coming out of her wherever.(トランプの多くの常軌を逸した行動の最後の一つが金曜日の夜のCNNのコメントで、討論会で司会をしたフォックスTVの人気女性キャスターのMegyn Kellyは『目から血が出ているし、どこからでも血が出ている』というもの)


Megyn Kellyは、討論会でトランプ氏のこれまでの女性蔑視発言を追及したが、トランプ氏は“blood coming out of her eyes”は「目が血走っている」と皮肉ったあと、“blood coming out of her wherever”は「あそこも血走っている」と含みをもたせて「メンスで機嫌が悪い」といったわけ。だが、これは明らかに言い過ぎで、〝返り血〟を浴びることになったのである。

2015年8月9日日曜日

freeganー食べ物を捨てるのはもったいない!


freegan は「フリーガン」、オックスフォード英語辞書(OED)の新語500の一つにこのほど選出された言葉で、Someone who eats thrown away food as they hate waste(もったいないから捨てられた食べ物を食べる人)と定義している。

WikipediaのFreeganism(フリーガニズム)の項には、“Freegans get free food by pulling it out of the trash (bins), a practice commonly nicknamed "dumpster diving" in North America”(フリーガンは、北アメリカでは〝ゴミあさり〟と一般的に呼ばれる行為によって、ゴミ箱からただの食べ物を拾う)という。dumpster divingのdumpsterは、アメリカでよく見る大型のゴミ箱でdivingは、頭から突っ込むこと。一般的にゴミあさりはgarbage picking。この一文で、freeganのfreeはfree foodと分かる。では、gan の語源は?vegan(極端な菜食主義者)のganである、という。

Freeganismは1990年代の半ばから登場した思想運動で、大量消費社会に対する抵抗と環境保護に基づき、食べ物の大量生産と大量廃棄に対するアンチテーゼである。

では、世界でどれぐらいの食物が廃棄されているか?国連のFood Loss and Food Wasteによると、“One-third of food produced for human consumption is lost or wasted globally, which amounts to about 1.3 billion tons per year.”(地球上で人間が消費するために生産される食物の三分の一が失われるか廃棄される。その量は年間13億トンに上る)

世界を見渡せば多くの人々が飢えに苦しむ一方で、こんな馬鹿気やことが行われているのだ。食料廃棄の中心は先進諸国で、6割りを輸入食品に頼る日本でも年間約1800万トンの食料は無駄に捨てられいる(農林水産省推計)。これは一人当りでは年間約15キロである。こんなことをしていて、本当によいのか?というのが、Freeganismの主張である。


欧米諸国では、公共の道路に捨てられたものは、公共のものとなり誰が拾ってもよいところが多く、貧富の格差が広がる中でfreeganの活動家も増えている、という。日本ではゴミ箱に捨てられた食物を拾って食べるのは、抵抗が強いが、食べ物を捨てないという工夫はもっと出来る筈である。

2015年8月6日木曜日

hard on とhard offー俗語の意味は?



hardは「堅い」という意味の形容詞だが、堅くなるのは男のアソコも同じで、俗語では「勃起した」。“You make me so hard.”(君が僕をそんなに堅くさせる=君を見てると立っちゃって) 状態持続を示すonが付くと、hard on(勃起している)。“I looked at her. She was staring at my hard on.” (僕は彼女を見た。彼女は僕の勃起を見つめた)というのは、恋人同士なら自然な成り行きであるが、“I don't get an instant hard on by seeing her naked on the bed.” (彼女がベッドに裸でいるのを見ても、僕はすぐには立たなかった)となると、これがhard off。

つまり、hard offは hard on の逆の状態で、日本語でいうと「ふにゃちん」。offは「離れる」「それる」といった意味の副詞としても使う。turn offは、栓を回して「止める」だが「しらけさせる」という意味でも使う。“I love my wife, but her weight has turned me off sexually.”(妻を愛しているが、彼女の体重がね、セックスをしらけさせるんだ)こういうのを、boner killerという(注:bonerはbone=骨から来た語で勃起したペニス。killerは殺し屋)

では、「エッチの最中にフニャチンになる」は英語で何というか? ズバリ Going soft during sex。softは「やわらかい」という形容詞だが、日本語でいう「ソフトな」よりも悪い意味で使われることが多い。つまり、「セックスの最中にやわらかくなる」は弱りもの。あなたがお悩みの場合、主語はYouでもyour penisでもどちらでもよい。“I can get hard and then while having sex my penis will go soft.” (最初は堅いんですが、やってる最中に中折れするんです)と言いましょう。


これは、ED(勃起不全)。Erectile Dysfunction is the inability of a man to have an erection hard enough to have sexual intercourse.(勃起不全は、男性が性行為のために十分な勃起を得られないことをいう)その原因は、心理的なものが大半を占めているという。男性の理想(あるいは女性の理想)は、rock hard erection(精力絶倫)。The harder the erection, the healthier the man.(ビンビンで、オトコは健康)と、健康食品の宣伝に書いてあったなあ…

2015年8月4日火曜日

elder orphan ー 一人暮らしの果てに



elder(エルダー)はolderと同じで「年上の」「年配の」、orphan(オーファン)は「孤児」。elder orphanは「年配の孤児」である。

Word Spyによると、“An elderly person who has no family or whose family cannot or will not provide care”(家族や面倒を見てくれる家族がいない老人)。日本でいう、「一人暮らしの老人」「独居老人」であるが、それよりも捨てられたというニュアンスが強く、「孤老」とでもいうべきかもしれない。

CNN(2015年5月18日)は、“The 'elder orphans' of the Baby Boom generation”(ベビーブーマー世代の独居老人)で、“Although the problem of elder orphans has been known for a while, new research suggests just how bad it is. About 22% of Americans 65 years and older are in danger of becoming, or already are, in this situation.”(独居老人の問題はこのところ問題になっているが、新たな調査では、状況は深刻だ。65歳以上のアメリカ人の22%は、独居老人になる危険があるか、もしくはその状態である)という。

その最大の要因は、“Silver Tsunami”(シルバー・ツナミ)、すなわち「一挙に押し寄せる高齢化の波」である。若いころに結婚もせず、子供をつくらなければ、気楽な一人暮らしで、家族を世話する面倒はないが、自分が年を取っても、世話をしてくれる人はなく、最後はelder orphanとして人生を終わることになる…。


だが、そんなことを今さら言っても仕方がない。You only live once(YOLO=どうせ人生は一度きり)、Elder Orphans Club でも作って楽しくやろうよ!