Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
basket caseは、アメリカン・ヘリテージ辞典によると、“One that is in a completely hopeless or useless condition”(全く絶望的で役に立たない状態にあるもの)を意味する。とくに、economic basket caseとして、巨額の財政赤字を抱えて苦境に陥っている国などを指す。
最近、やり玉に挙がったのがギリシャ。2009年に巨額の財政赤字の隠ぺいが発覚、国債の格付けが引き下げられて、ユーロ圏のsovereign debt crisis(国家財政の破綻による債務不履行の危機)の引き金を引いた。辛口のエコノミストは、“Greece is a basket-case country. Bring back the drachma.”(2012年8月22日付の米サン・ジャーナル)と論評している。ギリシャは財政的に行き詰った国。他国に迷惑を掛けないようにユーロ圏から離脱して、隔離された元の通貨ドラクマに戻れ、というわけ。
basket caseは、第1次大戦のころに軍隊の俗語として登場。当時の新聞には、“A basket case is a soldier who has lost both legs and both arms, and therefore cannot be carried on a stretcher.”(バスケット・ケースは、両腕・両脚を失い、担架で運べない兵士)とあり、basket(かご)で運んだという痛ましいできごとに由来する。まさに〝手も足も出ない状況〟で、誰も救いようがないというニュアンスが伝わってくる。
サウスイースト・ヨーロピアン・タイムズ(2012年8月4日付)は、ギリシャと犬猿の仲にあるトルコについて、“Turkey's economic performance since the 2001 financial crisis has transformed the country from a classic economic basket case into one of the world's fastest growing countries.”(2001年の財政危機以来トルコの経済実績は、この国を古典的な経済苦境の状態から、世界で最も成長が加速している国の1つに変えた)と述べている。かつて財政破綻の危機に直面した国でも立派に立ち直ることはできるのだ。
次なるbasket caseにならないか、目下心配なのは、公的債務残高がGDP(国内総生産)の200%以上に膨れ上がった日本である…。
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