Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
opportunityは「チャンス」。アメリカの別称はland of opportunity(チャンスの国)だ。アメリカは“a nation of immigrants”(移民の国)で、16世紀から始まった欧州諸国からの移民は、王政・貴族制度でがんじがらめになった階級社会を嫌い、新大陸に成功の機会を求めたのである。
リンカーン大統領は1860年代に、land of opportunityについて、誰もが金持ちになる平等な機会を与えられる社会が自由社会である、と述べている。それがAmerican dream(アメリカン・ドリーム)を支えてきたといえる。
では、現代のアメリカはどうか?ニューヨーク・タイムズ(2007年7月13日付)の社説は“The Land of Opportunity?”と〝疑問符〟を付けた。OECD(経済開発協力機構)が先進諸国の所得分配傾向を調査した結果、「アメリカでは、父親の所得が一番底の5分の1の層に属する場合、その子もそこで終わる確率は40%以上である」と報告しており、貧乏人は今や貧乏から這い上がることができないと指摘する。“The problem is that the have-not don’t have many opportunities either.”(持たざるものは、機会も多くないことが問題である)という。“window of opportunity”(機会の窓)は、閉じられつつあるのか?
オバマ大統領は2009 年3月7日のラジオ演説で“Time of crisis can be great opportunity.”(危機は大きなチャンスとなり得る=AP通信の見出し)と語った。オバマ氏は、深刻な経済危機の中で四半世紀ぶりに失業率が8%を超え、数百万人が住む家を失って、その日の生活にも困窮しているという厳しい現実を語った上で、こう言って国民を鼓舞した。“With every test, each generation has found the capacity to discover great opportunity in the midst of great crisis. That is what we can and must do today.”(様々な試練に際し、どの世代もこれまで、大きな危機の最中に大きなチャンスを発見する力を見出してきた。それはわれわれにも可能であり、今日やらねばならないことだ)
では、どこにチャンスを発見すればよいのか。残案ながら、演説はそこで終わり。
だが、歴史を振り返ると、ヒントがある。ケネディ大統領は1959年4月、冷戦の危機について演説した中で、こう述べた。“When written in Chinese, the word ‘crisis’ is composed of two characters-one represents danger and the other represents opportunity.”(中国語で「危機」という言葉を書くと、1つは「危」であるが、もう一方は「機」である)。1957年にソ連の人工衛星スプートニク1号の打ち上げが成功して、米国がショックを受けた後だが、彼はこのとき“The space age offers the opportunity for new voyages of discovery.”(宇宙時代は新たな発見への旅の機会を与えてくれる)と語った。その言葉通り、以後の宇宙開発競争が、アポロ計画と人類初の月面着陸成功につながっていく。
偉大な物理学者アルベルト・アインシュタインは、“In the middle of every difficulty lies opportunity.”(どんな困難の中にもチャンスがある)と述べている。チャンスを見出せるか否かは、各人に掛かっている。危機に遭遇してすぐに投げ出してしまう人もいれば、「なにくそ!」と歯を食いしばってがんばる人もいる。そういう意味では、“The economic crisis is a test of character.”(経済危機は、人の〝本性〟が試される機会である)と言えるだろう。The Sankei Shimbun (March 23 2009)
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