2013年1月31日木曜日

donation 見返りを求めない行為

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 donationは「寄付」「寄進」。動詞はdonateで、別の英語ではgive as a gift(贈りものとして与える)。とくに、見返りを求めないcharity(慈善行為)をいう。「寄付する人」がdonor。日本語でも「ドナー」というが、その場合は医学用語として、“a provider of blood, an organ, or other biological tissue for transfusion or transplantation”(輸血や移植のために血液や臓器、他の生体組織を提供する者)を指す。
 東日本大震災では、2011年3月11日の大地震発生以来、海外で震災支援の募金活動が展開されている。英ガーディアン(2011年3月14日付)は、“How to donate to the Japan relief effort”(日本の救援活動へ寄付する方法)という記事を掲載。“Many relief organisations worldwide are collecting money to help fund the relief effort in Japan after the earthquake and tsunami.”(世界中の多くの救援組織が、地震と津波のあと、日本での救援活動に資金を提供するため募金を集めている)と述べた。
 米ボストン・グローブ(同3月17日付)も、“How to make a donation to relief efforts in Japan”と同じ内容の見出しで募金を呼びかけたが、この“donation to relief efforts”が日本語の「義援金」に当たる。記事には、American Red Cross(米国赤十字社)のほか、Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)などの支援団体が名を列ねる。米国での募金活動は、日本と同じく全国に及び、スーパーのレジでも行われているという。
 ところで、医学用語としての donationでもっともポピュラーなのがblood donation(献血)。医療用の血液は世界各国で不足しがちだが、とくにアフリカでの不足は深刻。ガーナ・ニュース・エージェンシー(4月10日付)は、“Educational institutions urged to support blood donation”(教育機関に献血への支援を促す)と報道。“Shortage of blood has been one of the major causes of maternal and infant mortality in hospitals.”(血液不足が病院での母子の主な死亡原因の一つである)としたうえで、学生に献血を啓発するよう学校に協力を求めるという。また、ケニア放送ニュース(4月11日付)は、“Police officer in walk to create blood donation awareness”(警察官が献血への意識向上を呼びかけて歩く)と報じたが、彼が歩く距離は何と250㌔に上り、各地に駐在する警察官らに地元での献血を呼びかけているという。いずれの場合も献血の主役は健康な若者である。
 さて、donation の類義語には、offer(申し出、提供)とかcontribution(貢献、寄与)などがある。困っている人に手を差し伸べ、社会に貢献するというのが共通の趣旨である。“The measure of life is not its duration, but its donation.”(人生を評価する尺度は、その長さではなく、その寄与度である)と、かつて米国のある牧師が説いたが、けだし至言であろう。(May 2 2011)

2013年1月24日木曜日

outsmart 知恵のある者が勝つのだ

Illustrated by Kazuhiro Kawakita

  smartは日本語でも「スマート」というが、ここでは「利口な」「賢い」という形容詞。その前のoutは「まさる」という意味の接頭辞。outsmartは、知恵でまさって「出しぬく」「裏をかく」という動詞になる。類義語にoutwit、outfoxなどがある。foxは「キツネ」で、狡猾さを示す。
 AP通信は、2012年12 月31日ニューヨークで起こったsmart phoneの紛失事件の奇妙な顛末を報じた。題して“iPhone owner outsmart thief”(iPhoneの所有者が泥棒を出し抜く)。
 NEW YORK (AP) — Nadav Nirenberg told the New York Post that he left his iPhone in a livery cab on New Year’s Eve.(音楽家のNadav Nirenberg氏がNew York Postに告白したところによると、彼は大晦日にタクシーにiPhoneを忘れた)
 The next morning, the 27-year-old learned via email that someone was sending creepy messages to women using a dating app on the phone.(翌朝、誰かがiPhoneのデートのアプリを使って女性にいやらしいメッセージを送っているのをメールで知った)
 So he logged on to the service and offered the man a date — as a woman. He even sent a picture of a pretty girl.(デートサービスにログオンして、女に扮して男にデートを申し込んだ。可愛い女の写真も送ってやった)
 When the culprit arrived at Nirenberg’s apartment, the musician jumped out brandishing a hammer. But he also offered $20.(犯人がNirenberg氏のアパートメントに到着するや、この音楽家はカナヅチを振り上げて飛び出していった。が、20ドル札を差し出しもした)
 The thief handed him the iPhone and bolted.(泥棒はiPhoneを手渡すと、飛んで逃げた)
 つまり、音楽家は手練手管でもって見事iPhoneを取り戻したというわけ。
 ところで、ニューヨーク・タイムズ(2011年12月28日付)は、“Will China outsmart the U.S.?”(中国は米国を出しぬくだろうか)との寄稿を載せた。
 この見出しからすぐに思い出したのは、クリントン米国務長官が打ち出したsmart powerと呼ばれる外交方針。外交、経済、軍事、政治、法律、文化にいたる諸手段を駆使して〝賢明な力〟の外交を展開するというもの。それで、総合的な外交でも中国にしてやられると懸念しているのか、と早とちりしそうになった。
 だが、記事の内容はさにあらず。環境エネルギー、バイオ、ナノテクノロジーなど先端技術分野の研究開発で、中国が10年後に米国を追い抜くのでは、と懸念されているというのだ。“Our global competitiveness is based on being the origin of the newest, best ideas. How will we fare if those ideas originate somewhere else?”(われわれのグローバルな競争力は、最新、最良のアイデアを生み出す源であることに基づいている。これらのアイデアが他所で生まれたならば、われわれはどうしてやって行くのか)と。まさに世界の国々はoutsmartするために、躍起になっているのだ。
 さて、カナダテレビ放送(2011年1月5日)は、“Can other smart phones outsmart the iPhone?”(他のスマートフォンはアイフォーンを超えられるか)と報じた。ケータイの市場でも、より高度な機能を備えたスマートフォンの開発競争は激しい。アップルのアイフォーンに追いつけ追い越せと、各メーカーはoutsmartのためにしのぎを削っているという内容。2013年を迎えた今もsmart phoneの戦いは決着が付きそうにない。

2013年1月13日日曜日

redux  Revolution Redux すなわち「革命再来」

Illustrated by Kazuhiro Kawakita


 reduxはラテン語起源で、別の英語ではbrought back、「戻って来た」という意味の形容詞。「再来」「二の舞」など、ケースバイケースで訳す。カタカナ読みは「リダックス」。
 National Journal(2013年1月10日付)は、"Can Obama and Karzai Avoid Iraq Redux?”(オバマ米大統領とカルザイ・アフガニスタン大統領は、イラクの〝二の舞〟を回避できるか?)と、今後のアフガン問題の進展に疑問を投げかけた。両首脳は1月11日にホワイトハウスで会談した。
 ”The White House would like to withdraw as many of the remaining 68,000 U.S. troops from Afghanistan as rapidly as possible between now and the end of 2014.”(米政府は、今から来年末までに6万8000人の米軍兵をできるだけ早く撤退させたい意向だ)
 だが、撤退後のアフガンの治安はどうなるのか?タリバン側が再び勢力を取り戻し、過激化し、武装蜂起が頻発、米軍撤退後のイラクの二の舞になる恐れがあるという。さらに、最悪の場合にはカルザイ政権が打倒される可能性もなしとはしない。そこで、カルザイ氏は、引き続き金銭的な支援を求めている。もっとも、腐敗のはびこるカルザイ政権において、金銭的支援は、金をドブに捨てるようなもの、との指摘もなされている。オバマ氏は悩ましい選択を迫られよう。
 ところで、米タイム誌(2011年12月5日号)の表紙の見出しはsunawachi
(革命再来)。記事は、“Months after ousting Mubarak, Egyptians rebel against military rule.”(ムバラク大統領を政権の座から追い出して数カ月後、エジプト人らは軍事支配に反抗する)という内容。つまり、“The revolution’s second act”(革命の第2幕)というわけ。2011年 エジプト革命は1月25日で1周年を迎えるが、Arab Spring(アラブの春)の合言葉であるdemocracy(民主主義)実現への道は、決して平坦ではないという教訓を与えた。
 グローバルな視点でみると、中東世界で起こった〝アラブの春〟は、20世紀前半の社会主義革命以来のRevolution Reduxと評価された。その主張は、“No tyranny!”(独裁政治は不要)。一連の反政府抗議デモでは、独裁者は軍事力を背景に強権をふるい、国民に銃口を向けることも辞さないが、最後は抗議デモに屈することになった。タイム誌の2011年のPerson of the Year(その年の人)は、The Protester(抗議する人)だった。
 しかし、アラブの春は2012年には、どう展開したか?エジプトでは、選挙で新たに選ばれたモルシ大統領に対しても、民主化活動家たちがNOを突きつけ、chaos redux (混乱の再来)。年末には、新憲法が承認されたが、今後の展開も予断を許さない。
 “Many people across the world share the new call for revolution today.”(世界の多くの人々が今日、革命の新たな呼び掛けに賛同する)という状況は今も続いている。2013 年もevolution Reduxが各地(とくにロシア、中国)で起るだろう。“But a revolution may cause more problems than it will solve.”(だが、革命は解決するよりも多くの問題をもたらすかもしれない)。chaos reduxも覚悟しておかなくてはならない。





2013年1月7日月曜日

Happy new Year!

Illustrated by Kazuhiro Kawakita

2013年1月4日金曜日

renewable 地球に優しい!

Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 renewはre-(再び)+ new(新しい)で、日本語でも「リニュー」というように「再び新しくする」こと。able(~が可能である)という接尾辞が付くとrenewableで、「再び新しくできる」「更新できる」という形容詞。ここでは、科学用語としてrenewable energy(再生可能エネルギー)の意味で、名詞として使う。通常は複数形。
 renewablesは、sunlight(太陽光)、wind (風) 、rain(雨)、tides(潮)、geothermal heat(地熱)のほかに植物やエタノールなどのbiofuel(バイオ燃料)が含まれる今注目のエネルギーだ。一方、石油などfossil fuel(化石燃料)はnon-renewable resource(再生不可能な資源)という。
 renewable energyの問題点は、エネルギー生産に掛かるコスト。つまり、採算性が悪いことが普及のネックとなっている。
 ところが、Read the science (2013年1月2日付)のBlogでAmy Huvaさんは、"Renewable reality feasible and inexpensive"(再生可能エネルギーの現実、採算が合うし、安い)と書いているのだ。論点はこうだ。
 ‘Aiming for 90% or more renewable energy in 2030 in order to achieve climate change targets of 80-90% reduction of CO2 from the power sector leads to economic savings, not costs.’
 (発電部門において80から90%の二酸化炭素ガスを削減しようという気候変動の目標値を達成するために、2030年までに再生可能エネルギーへ90%以上転換を目指すならば、経済的にはコストではなく、むしろ節約ができる)という。
 すなわち、二酸化炭素を無制限に吐き出す従来型の発想からすると、renewablesの採算性は化石燃料などに劣るだろう。しかし、地球環境を考慮に入れるならば、再生可能エネルギーへの転換はコストなしで保全が可能になるだけでなく、お釣りが来るという。
 これはDelaware Technical Community CollegeのCory Budischak教授らの研究によるもので、Journal of Power Sources, 225, 2013に掲載された論文Cost-minimized combinations of wind power, solar power and electrochemical storage, powering the grid up to 99.9% of the timeを紹介したものだ。

 ところで、UPI通信(2011年12月20日付)は、“Germany used more renewables in 2011”(ドイツは2011年、より多くの再生可能エネルギーを使用した)と報じた。それによると、ドイツでは風力やbiomass(バイオマス)を中心に再生可能エネルギーの使用割合が、2010年の16.4%から昨年は19.9%に伸びたという。一方、“Nuclear power dropped from 22.4 percent in 2010 to 17.7 percent in 2011.”(原子力の割合は2010年の22.4%から2011年は17.7%まで下落した)。
 その要因の1つが、昨年3月の福島第一原子力発電所の事故。ロイター通信(同年3月14日付)が、“Japan crisis hits nuclear sector; boosts renewables”(日本の危機が原子力分野を直撃:再生可能エネルギーをテコ入れへ)と報じた記事を裏付ける結果となった。
 世界各国の政府は、リスクが大きい原発への依存度を下げ、再生可能エネルギーへの転換を模索し始めている。安全で、しかも環境保全に役立つ新たな発想を目指そう。