rangeは、もとは「列」や「幅」を意味するが、ここでは、車が走る「走行距離」を意味する。anxietyは「心配」「不安」。そこで、range anxietyは「走行距離に対する不安」である。カタカナ読みは「レインジ・アンザイァティ」。
ニューヨーク・タイムズ(昨年1月15日付)の新語欄では、range anxietyを“The fear of being stranded in an electric car because of insufficient battery performance ― said to be a barrier to sales of electric vehicles.”(不十分な電池の性能のために電気自動車がエンコする恐れ―電気自動車販売の障壁であるという)と定義している。もう少し正確にいえば、“It refers to a driver’s fear of using the electric car for longer trips because there is no quick way to recharge if the battery runs down.”(電池が切れた場合に素早く充電する方法がないので、より長い距離のドライブに使えないのでは、というドライバーの恐れを指す=ウォールストリート・ジャーナル)。
だが、一般的な電気自動車のrange(連続して走行できる距離)はどれくらいであろうか?
米国では、通勤や買い物など日常生活で車を使用する場合、100㍄(約161㌔)が目安になるという。“The industry has worked on new battery technology which holds the promise of a 100-mile range.”(業界は、100㍄の走行距離を補償する新たな電池技術の開発に取り組んできた)。現在の技術水準では、100㍄を実現するため、最高速度を時速85㍄に制限しなければならない上に、家庭で充電した場合、1回の充電に一晩近くかかってしまうという。それだけに、電気自動車のユーザーの多くがrange anxietyに悩まされている。
ところで、ウォールストリート・ジャーナル(9月1日付)のブログは、“General Motors Wants Trademark for ‘Range Anxiety’ ”(GMが「レインジ・アンザイァティ」の登録商標を求める)と報じた。range anxietyの語は、実はGMの役員が1990年代末から2000年初頭に初めて使用したとされる。同社はこの言葉を商標登録して独占的に使い、今後、電池が切れた時の発電用のガソリン・エンジンを搭載した電気自動車Voltを売り込む計画という。もっとも同業他社は、“By all means, GM can have ‘range anxiety.’”(どんなことをしたって、GMも「レインジ・アンザイァティ」を抱えることになる)と静観の構えだ。
さて、われわれは自分の知らないことや未知の世界に直面した場合、不安に陥る。だが、それは極めて自然な反応であろう。不安になるから用心するし、事態を改善しようとする。詩人のT・S・エリオットは“Anxiety is the hand maiden of creativity.”(不安は創造性の助手)と述べており、range anxietyは電気自動車発達のカギを握る、と言い添えておく。The Sankei Shimbun
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