2013年6月30日日曜日

snailpaper  新聞の運命を示す


 snailは「カタツムリ」で、paperはnewspaper(新聞)の略称。Wordspy の定義によると、snailpaperは“a newspaper delivered physically and so more slowly compared to online news; the print edition”(オンラインのニュースに比較すると、物理的に配達されるのが遅い新聞:印刷版)。今や新聞はインターネットとのニュース競争に負けて、カタツムリのように遅い「旧聞」になったということ。
 TeleRead(2013年6月8日付)の“Scissors, Paper, Screen: The Future of Reading”(ハサミと紙とスクリーン画面:読書の未来)という記事で、“It's 2013. The screens are winning adherents left and right. Print newspapers are turning into 
‘snailpapers’ that arrive at our doorsteps with news that is 12 hours late.”(今は2013年、スクリーン画面は左右両陣営の支持を獲得しつつある。紙の新聞は、ニュースが12時間遅れで玄関に届けられる、カタツムリのような「旧聞」になりつつある)と述べている。
 ニュース報道を旨としてきた新聞は、ネットと同じニュースを掲載する限り、ここに述べられている通り、12時間遅れの「旧聞」でしかない。おそらく読者は、インターネットと縁のない高齢者などに限られるだろう。新聞の未来は大きく変わり始めているのである。
 さて、ネットの黎明期の1980年代にsnail mailという新語が登場した。すなわち、“letters, bills, and other mail delivered physically and therefore much more slowly than e-mail”(物理的に配達される手紙や請求書の類いでEメールよりはるかに遅い)というものだ。この時すでに、今日の状況が予想されていたのである。
 しかしながら、紙の新聞は衰えつつあるにしても、ニュース報道は今後も必要とされるだろうし、ますますより素早い報道が要求されていくだろう。おそらく、smart phoneがこれからのニュース端末になることは間違いないのだ。
 その一方で、紙の新聞は発展途上国などで依然勢力を持つように、今しばらくは存続するだろう。
 それにしても、紙の新聞や書物はスクリーン画面と違って確かに遅いけれども、考える時間を与えてくれる。上記のTeleRead の記事は、“Will poor countries where paper books still prevail produce children who are smarter than those in wealthy countries where all children read on screens?”(紙の書物が普及している貧しい国の方が、スクリーン画面で本を読む豊かな国の子供よりも、より賢い子供を生み出すだろうか)と結んでいる。


2013年6月19日水曜日

YOLO 流行の捨て台詞


 YOLOは“You only live once”の頭文字を取った略語。すなわち「人生は1度しかない」。“carpe diem”(seize the day = この日をつかめ)とか、“memento mori”(死を忘れるな)と同じ意味合いで、 “One should enjoy life”(人生を楽しむべし)との含みがある。
 カナダ人ラッパーのDrakeが自作ソングの“The Motto”(2011)で、“You only live once. That is the motto, YOLO”(人生一度しかない。それがモットー、ヨロさ)と歌ったのがきっかけで、アメリカで流行。ネットでもLOL (Lough out loud=大笑いする)などと同じように使われるようになった。
 ところで、“You only live once”のフレーズは、米女優の Mary Jane West (1893-1980)が言い出したとも伝えられる。彼女は歌手、劇作家、スクリーン・ライターの経歴を持ち、またセックスシンボルとして人気を博した。
 また、“You only live once” は1937年に Fritz Langの film noirの題名に使われたという。さらに、1952年にはコメディアンのJoe E. Lewisが “You only live once, but if you work it right, once is enough.”(1度しかない人生だけど、正しく生きるならば、1度で十分さ)と述べている。
 ところが、ワシントン・ポストやハフィントン・ポストではYOLO を、“newest acronym you’ll love to hate”(憎みたくなる頭文字の言葉)とか “dumb”(バカ)とか、その無軌道な使い方をはげしく非難した。実は2012年9月、21歳のラッパーErvin McKinnessが、酔っ払い運転で 120 mph(193 km/h)のスピードを出して事故死する直前、Twitterに “Drunk af going 120 drifting corners #FuckIt YOLO.”(酔っ払って120マイルでカーブをドリフト。コン畜生メ。ヨロ)と書いたのだ。
 ボストン・グローブ(2012年8月 26日付)に、 “What is YOLO? Only teenagers know for sure-A youthful slang craze flies under the adult radar”(YOLOとは何か?10代だけがはっきりと知っている。大人のレーダーに掛からない若者のスラング熱)との記事が載っていた。
 最近の若者の使い方はこうだ。“You want to park illegally in this spot? YOLO!”(あんた、ここに違法駐車する気?勝手にしたら) “Should I buy these shoes or pay rent? YOLO!”(この靴買うか、借りるか。1度きりだから)
 YOLO is now “used by teens only as an absolute justification to do dangerous or harmful things.”(YOLOは今やティーンエイジャーによって、危険で有害な行為を絶対に正当化するためにだけ使われている)というのだが・・・。

2013年6月10日月曜日

mastectomy  お乳切っちゃうって、すごい勇気


 mastectomyの語源は、ギリシャ語のectomeがcutting(切除)、mastosが woman's breast(女性の胸)で「乳房切除術」。一般的に、乳がんにかかった女性ががんの治療のためにこの手術を受けて乳腺や乳房を切除する。カタカナ読みは「マステクトミー」。
 mastectomyは一躍、世界中に知られる英単語の一つとなった。理由は、米女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、自身の遺伝子を検査してもらった結果、乳がんを発症する確率が87%以上と非常に高いことを知って、予防措置として両方の乳房を切除したことを公にしたことによる。彼女の母親は2007年に56歳で乳がんと卵巣がんを発症して死亡、また叔母も乳がんで亡くなっているという。
 父親で俳優のJon Voight氏はEntertainment Tonightのインタビューにこう答えた。”She's a very brave person and I love her deeply. I'm always going to be at her side. She handles herself very well. She says what she wants to say now."(彼女は大変勇敢な女性で、私は深く彼女を愛している。私はいつも彼女の味方だ。彼女はうまくやっている。今も言いたいことを言っている)
 対称的なのは彼女のパートナーのブラッド・ピット。彼は病床のアンジェリーナに愛の手紙を読み上げて、大粒の涙を流していたという。
 さて、She's a very brave person から思い出すのはAmazonである。Amazonはギリシャ神話に登場する伝説的な女人族で、英語ではthe Amazons。いわゆる「アマゾネス」はポルトガル・スペイン語(Amazonas)。その語源はfolk etymology によると、a- はwithout(ない)+ mazos はbreasts(乳房)で、「乳房がない」という意味だ。 これはthe story that the Amazons cut or burned off one breast so they could draw bowstrings more efficiently(アマゾン族の者は片方の乳房を切除したり、焼いたので、よりうまく弓が引けたとする話)に基づいているという。
 戦争のために、乳房を切除することも辞さなかった勇猛果敢な女性たち。彼女らにとって、男はstallion(種馬)に過ぎなかったとも伝えられる。 
 ちなみに、医学用語ではMastectomyは切除部位によって名称が異なる。Radical Mastectomy(根治的乳房切除術)、Segmental Mastectomy(乳房扇状部分切除術)、Simple Mastectomy(全乳房切除術)、Subcutaneous Mastectomy(皮下乳房切除術)という。