Illustrated by Kazuhiro Kawakita |
eat outは「外で食べる」で、外食の意味。「オンライン語源辞書」によると、“dine away from home”(家庭から離れてご馳走を食べる)という意味で1933年に登場したという。当時は外食が特別の日に限られていたが、現代のアメリカでは日常のこと。それで、これに対応する言い方としてeat in(内で食べる)という表現もあらわれた。
クリスチャン・サイエンス・モニター紙(2006年10月6日付)の“Americans opting to eat out”(外食を選択するアメリカ人)と題する記事では、“Eating out is the new eating in”(外食は新しい家庭食だ)という。米国の母親の60%が主婦業以外に職を持ち、その多くが料理をする時間がなくて外食している、といったことがその背景にある。
コストの面では、以前は材料を買って家庭で調理した方が外食するより安い、と考えるのが常識だった。だが、最近では「自分の時給と家庭で料理に費やす時間を掛け合わせて計算すると、その時間を働いて金を稼ぎ、家族と一緒に外食する方が経済的」とする人が増えているという。まさに“the capitalism of the kitchen”(台所の資本主義)だ。かくして、一般家庭の全食費に対する外食の割合は、一九五五年には平均25%だったが、今では50%を超えたという。
米レストラン協会(NRA)の統計によると、今年、全米のレストランの総売上は初めて5000億ドル(約60兆円)を突破。また、同協会の調査では、テレビが設置してあるテーブル席を好む客が多いとしており、「顧客はレストランを家庭の延長と見ている」と分析している。
外食の方が家庭で料理するよりも安上がりと実感できるのは、ファストフード。ハンバーガーのセットメニューでもピザの食べ放題でも、満腹するまで食べて5ドル(600円)以下というのが、今や通り相場だ。しかも、ソフトドリンクは飲み放題というところが多い。だが、ファストフードはトランスファットが問題にされるなど、高脂肪、高カロリーのメニューが肥満の原因になると批判されている。
また、一般のレストランでも、「出される量が多過ぎる。減らすべきだ」との声が、健康や医療の関係者の間で高まっている。だがレストラン側は、「もし量を減らしたら、顧客から文句が出る」と訴える。健康的な少量メニューはまだまだ遠い先の話のようだ。
そこで、外食の場合、big eater(大食い)はさて置き、small eater(少食の人)は、left-over(食べ残し)を家に持って帰る習慣が出来上がっている。相当の高級レストランでもその辺を心得ており、to-go box(お持ち帰り用容器)やdoggy bag(犬のエサ用の袋、中身は人間が食べるとしても)を用意している。
さて、最後に一言。eat outには、俗語として女性に対するオーラル・セックスの意味があるので、使用にはご用心。The Sankei Shimbun(November 19 2006)