2011年11月30日水曜日

jump-start


Illustrated by Kazuhiro Kawakita

 jump-startは、jump(ジャンプ)してstart(スタート)する、という文字通りの言い方。エンジンがガツンとかかって、自動車が躍り上がって走り出す様を想像してほしい。つまり、バッテリーが上がったdead car(死んだ車)を、booster cable(ブースター・ケーブル)でもう一台の車のバッテリーにつないで蘇生させること。あるいは、坂道を転がしてエンジンをスタートさせる「押しかけ」。そこから転じて、停止状態にあるものに「活」を入れて蘇らせることをいう。
 2008年9月の金融危機以来、米国だけでなく世界各国の緊急課題は、“to jump-start the economy”(経済をジャンプスタートさせること)。タイム誌(2009年1月8日付)は、“Obama’s Stimulus: Jump-Starting His Long-Term Agenda”(オバマ氏の景気刺激策、長期的課題をジャンプスタート)と報じたが、新政権が発足して100日を経過、ようやく景気対策が動き出した。だが、景気回復への道のりは平坦ではない。(注:これまで3年近く手を変え品を変え景気対策を打ってきたが、米国の景気は悪化の一途をたどっている)
 さて、景気回復のカギを握ってきたのが自動車メーカーのビッグ3。ワシントン・ポスト(2009年3月14日付)は、“Could the Volt Jump-Start GM?”(ボルトはGMをジャンプスタートさせられるか?)と報じた。このVoltは、GM が2010年に投入を検討している電気自動車Chevrolet Voltで、果たしてそれがGMの起死回生策になるか、という意味。今回の景気後退の背景には、石油依存からクリーン・エネルギーへの経済システムの転換という大きな課題があるだけに、GMだけでなく自動車産業全体がその矢面に立たされている。
 さて、ジャンプスタートさせねばならないのは、自動車や経済だけではない。“Jump-start your brain!”(頭脳に活を入れろ)というのが、「脳ブーム」に沸く昨今のポピュラーな表現。つまり、発想の転換をはかって、マンネリから抜け出そう、という意味で使う。
 フォードの創業者であるヘンリー・フォード(1863~1947)は、発想の転換について、こう述べている。“When everything seems to be going against you, remember that the airplane takes off against the wind, not with it.”(すべてのことが、あなたに逆行するように思われる時には、思い出せ。飛行機は追い風ではなく、向かい風で飛び立つということを)。この飛行機は無論、昔のタイプで、向かい風にこそ揚力が働く、という航空力学の原理を指摘。
 また、彼はこうも言う。“Don’t find fault, find a remedy.”remedyは病気の治療法とか、欠点の改善策。粗探しは止めて、前向きに解決策を探そうという意味。そのココロは?“Jump-start your motivation!”(やる気を出そう)。The Sankei Shimbun (May 11 2009)


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